無気肺は臨床でよく出会う病変ですが、無気肺に関してあまり深く考えたことのない先生も多いのではないでしょうか
今回は無気肺の成因や画像所見についてまとめました
無気肺の病態生理 1)
まずは無気肺の成因についてです
6つの病態に分けることができます
吸収性(閉塞性)
病態
気道の閉塞が生じ、その末梢にトラップされた空気が吸収され無気肺となる
吸気の酸素濃度が高いほど吸収が速い(数分以内のことも)
無気肺の部位は閉塞部位に一致する
鑑別疾患
Ⅰ. 大気道の閉塞
- 気道内部病変
- 腫瘍
- 気管支原性癌
- 気管支カルチノイド
- 腺様嚢胞癌
- 転移
- リンパ腫
- 良性気管支内腫瘍
- 炎症
- 結核・真菌症
- サルコイドーシス
- その他
- 誤嚥
- 挿管チューブ位置異
- 粘液栓
- 気管支変位
- 気管支離断
- アミロイドーシス
- Wegener肉芽腫症
- 腫瘍
- 気道外部病変
- 腫瘍浸潤
- 肺門部リンパ節転移
- 肉芽腫性リンパ節炎
- 縦隔腫瘤
- 縦隔線維化
- 大動脈瘤
- 心拡大
Ⅱ. 小気道の閉塞
- 粘液線毛クリアランスの異常
- 胸腹部痛、外傷、手術
- 中枢神経活動低下
- 呼吸抑制性薬剤
- 抗コリン薬
- 全身麻酔
- 気管内挿管
- 乾燥空気による換気
- 高濃度O2吸入
- 煙の吸入
- 慢性閉塞性気道疾患
- 気管支喘息
- 慢性気管支炎
- 肺気腫症
- 閉塞性細気管支炎
- 気管支拡張症
- 嚢胞性線維症
- 急性感染症
- 急性気管支炎・細気管支炎
- 肺炎
癒着性
病態
肺胞サーファクタントの欠乏により表面張力が増加し、肺胞が虚脱する
一旦虚脱した肺胞が再膨張しにくい
サーファクタント欠乏の原因によってびまん性もしくは局所性無気肺を生じる
鑑別疾患
A. びまん性サーファクタント欠乏
- 硝子膜症
- ARDS
- 喫煙
- 心臓バイパス手術
- 尿毒症
B. 局所性サーファクタント欠乏
- 肺塞栓症
- 急性放射線性肺臓炎
- 肺炎
受動性
病態
胸腔内の陰圧を保てなくなることで、肺胞が弾性収縮により虚脱する
鑑別疾患
- 単純性気胸
- 横隔膜異常
- 横隔膜麻痺
- 先天性横隔膜弛緩症
圧排性
病態
肺外からの圧迫により肺胞が虚脱する
鑑別疾患
A. 胸腔内占拠性病変
- 緊張性気胸
- 胸水
- 膿胸
- 胸膜腫瘍
- 肺腫瘤
- 気腫性嚢胞
- 横隔膜ヘルニア
B. 腹部膨満
- 病的肥満
- 腹腔内腫瘍
- 肝脾腫
- 大量腹水
- 腸閉塞
- 妊娠
瘢痕性
病態
肺コンプライアンスの低下により肺容量が低下する
牽引性気管支拡張を伴う
鑑別疾患
A. びまん性肺線維症
- 特発性肺線維症
- サルコイドーシス
- 珪肺症
- 炭鉱夫塵肺症
- アスベスト肺
- 膠原病(強皮症など)
限局性肺線維症
- 気管支拡張症
- 慢性結核・真菌症
- 放射線性線維症
荷重性
病態
重力に従い下方部分(臥位の場合は背部)が圧排され虚脱する
通常は無気肺にならないが、長期臥床や喀痰排泄困難、肺水腫などがリスクとなる
無気肺の画像所見
最近ではCTが容易に撮像できるため、無気肺の存在診断に困ることはほとんどありません
実は、レントゲンだけでも無気肺は十分に診断可能で、部位まで推定することが可能です
無気肺のレントゲン所見 1)
直接所見
無気肺の初期で含気がある程度保たれている場合は肺血管が集簇して見える
肺胞の含気がなくなると血管の区別がつかなくなるが、気管支内のairが残存していれば集簇したair bronchogramが見える
無気肺部が虚脱し体積が減少すると葉間裂が牽引される
間接所見
肺野の透過性低下
横隔膜挙上
気管、心臓、縦隔、肺門部の偏位
周囲の肺の代償性過膨張
肋間狭小化(健側に比し)
Shifting granuloma(過去の画像と比べ既存の病変の位置が変化)
罹患肺葉による画像所見の違い 2)
右上葉
縦隔側・肺尖部方向へ虚脱する
小葉間裂が上方へ、大葉間裂が前方へシフトする

右中葉
縦隔方向へ虚脱する
小葉間裂が下方へ、大葉間裂が上方へシフトする

右下葉
縦隔側・後下方へ虚脱する
大葉間裂・小葉間裂は後下方へシフトする

左上葉
縦隔側・前方へ虚脱する
大葉間裂が上方へシフトする

左下葉
縦隔側・後下方へ虚脱する
大葉間裂が後下方へシフトする

まとめ
今回は無気肺についてまとめました
なんとなくスルーしていた無気肺も、これを機に是非見返してみてください
きっと新たな発見があると思います
References
- Types and mechanisms of pulmonary atelectasis
J H Woodring, J C Reed
J Thorac Imaging. Spring 1996;11(2):92-108. doi: 10.1097/00005382-199621000-00002. - Radiographic manifestations of lobar atelectasis
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J Thorac Imaging. Spring 1996;11(2):109-44. doi: 10.1097/00005382-199621000-00003.