General Internal Medicine

異型リンパ球の特徴や臨床的な意義は?

Answer

異型リンパ球は正常リンパ球の反応性変化に伴う形態を示すリンパ球の総称です。

日本検査血液学会標準化委員会では、
「直径16μm (赤血球直径のおおよそ2倍)以上で細胞質は比較的広く、好塩基性が強い細胞で、アズール願粒、空胞を認める場合がある。核は類円形、核小体が認められるものもある」
と定義されています。

伝染性単核球症でみられる異型リンパ球が特に有名ですが、他にも多数の疾患で報告されており、最近ではCOVID-19での報告もあるように、特異性は低いです。

なお、似た用語で異常リンパ球がありますが、これは腫瘍細胞を指します。

今回は異型リンパ球の特徴や臨床的な意義についてまとめました。

異型リンパ球とは?

異型リンパ球の特徴は?

The atypical lymphocyte
T A Wood, E P Frenkel.
Am J Med. 1967 Jun;42(6):923-36. doi: 10.1016/0002-9343(67)90073-3.

1907年にTürkにより伝染性単核球症患者で初めて報告され、1923年にMcKinlay、Downeyにより詳述された

分類と特徴

Type A:大型リンパ球に酷似、DowneyⅡ型に相当、サイズは12-25µm、核は円形~卵形、クロマチンは赤紫で大きな凝集を形成、辺縁不明瞭、細胞質は豊富、淡染、時にアズール顆粒
異型リンパ球の37%、薬剤性ではみられず

Type B:DowneyⅠ型に相当、サイズは14-20µm、核は卵形~切れ込み、細胞質は比較的豊富、空胞を有し明るい青~濃い灰色、異型リンパ球の30%

Type C:形質細胞様の細胞、サイズは12-35µm、核は卵形~円形で細胞質の長軸から60-90°の配置、細胞質は明るい空色~青色、正常でもみられるが症例で増加する、異型リンパ球の17%

Type D:DowneyⅢ型に相当、サイズは11-15µm、核は円形、凹型、細胞質は乏しく明るい青色、、異型リンパ球の9%

Type E:サイズ、細胞質、核クロマチンは正常小リンパ球と同程度、核に深い溝が複数みられる、異型リンパ球の4%


Infectious mononucleosis diagnosed by Downey cells: sometimes the old ways are better
Henry M Feder Jr, William N Rezuke et al.
Lancet. 2020 Jan 18;395(10219):225. doi: 10.1016/S0140-6736(19)32962-9.

Downey細胞:1923年にMcKinlay、Downeyにより報告された反応性/異型リンパ球

Ⅰ型 (A):正常リンパ球より少し大きい、切れ込みのある豆様の核、しばしばアズール顆粒や空胞

Ⅱ型 (B):より大きく細胞質も広い、赤血球と隣接

Ⅲ型 (C):大きく好塩基性の細胞質、一つ以上の目立つ核小体


臨床では異型リンパ球の形態をさらに区別して報告することは少ないですが、あえて分類するのであればDowneyの分類が用いられることが多いと思います。

異型リンパ球がみられる疾患は?

The atypical lymphocyte
T A Wood, E P Frenkel.
Am J Med. 1967 Jun;42(6):923-36. doi: 10.1016/0002-9343(67)90073-3.

健常者でも100個の単核球のうち4-11個の異型リンパ球がみられた

20/100個以上みられた場合に異型リンパ球症と判断できる

異型リンパ球がみられる疾患


異型リンパ球がみられる疾患は非常に多く、リンパ球が活性化する病態では出現しうるのだと思います。

20%以上まで増加する疾患は少なく、著しく増加している場合は診断のきっかけになるかもしれません。

  • 異型リンパ球は様々な疾患で報告されている

異型リンパ球の臨床的な意義は?

では、異型リンパ球の出現する疾患の中で鑑別を狭める方法はないのでしょうか?

特に頻度の高い伝染性単核球症と類似疾患の鑑別についてまとめました。

異型リンパ球の数で鑑別できる?

Accuracy of Signs, Symptoms, and Hematologic Parameters for the Diagnosis of Infectious Mononucleosis: A Systematic Review and Meta-Analysis
Xinyan Cai, Mark H Ebell, Lauren Haines.
J Am Board Fam Med. 2021 Nov-Dec;34(6):1141-1156. doi: 10.3122/jabfm.2021.06.210217.

伝染性単核球症の診断に有用な所見に関するMeta-analysis

異型リンパ球の割合が高いほど伝染性単核球症らしい


Clinical differentiation of infectious mononucleosis that is caused by Epstein-Barr virus or cytomegalovirus: A single-center case-control study in Japan
Takamasa Ishii, Yosuke Sasaki, Tadashi Maeda et al.
J Infect Chemother. 2019 Jun;25(6):431-436. doi: 10.1016/j.jiac.2019.01.012.

EBVとCMVによる伝染性単核球症の比較

異型リンパ球の白血球中の割合はEBVで43.5% (27.0-58.5)、CMVで15% (3.0-37.0)であった (p <0.001)


異型リンパ球の割合が高いほどEBVによる伝染性単核球症の可能性が高く、CMVによるIM様症候群ではそれほど高くならないようです。

異型リンパ球の免疫形質で鑑別できる?

The Nature and Clinical Significance of Atypical Mononuclear Cells in Infectious Mononucleosis Caused by the Epstein-Barr Virus in Children
Olga S Fedyanina, Anna E Filippova, Olga I Demina et al.
J Infect Dis. 2021 May 28;223(10):1699-1706. doi: 10.1093/infdis/jiaa601.

小児の伝染性単核球症でみられた異型単核細胞の免疫形質を評価

異型単核細胞はほとんどがCD8+で一部CD19+がみられたが、CD4+はみられなかった

末梢血中のCD8+異型単核細胞はEBV再活性化、非EBVと比較しEBV初感染で優位に多かった

伝染性単核球症でみられる異型単核細胞は主に細胞障害性T細胞と考えられる


Comparative immunophenotypic features of EBV-positive and EBV-negative atypical lymphocytosis
S David Hudnall, Jyoti Patel, Hanna Schwab et al.
Cytometry B Clin Cytom. 2003 Sep;55(1):22-8. doi: 10.1002/cyto.b.10043.

異型リンパ球症のEBV陽性例と陰性例で異型リンパ球の免疫形質を比較

EBV陽性例ではCD8+T細胞、NK細胞の増加がみられたが、CD4+T細胞、CD19+B細胞の変化はみられなかった

CD8+T細胞の中でもCD45RO+、CD28+の増加がみられた
  ※CD45RO+は活性化したT細胞、CD28+は細胞障害性T細胞を示す


Phenotypic properties of atypical lymphocytes in cytomegalovirus-induced mononucleosis
D Felsenstein, W P Carney, V R Iacoviello et al.
J Infect Dis. 1985 Jul;152(1):198-203. doi: 10.1093/infdis/152.1.198.

CMVによる単核球症に伴う異型リンパ球の免疫形質を評価

異型リンパ球のうち43±17%がCD8+T細胞、17±7%がCD4+T細胞、39±9%が非T細胞であった


Increase of atypical lymphocytes expressing CD4+/CD45RO+ in an infectious mononucleosis-like syndrome associated with hepatitis A virus infection
Hidehiro Watanabe, Hideaki Sekine, Tomonori Uruma et al.
J Infect Chemother. 2009 Jun;15(3):187-90. doi: 10.1007/s10156-009-0677-9.

HAV感染に伴う異型リンパ球の免疫形質を評価

白血球 3,900/µLのうち、正常リンパ球が39.5%、異型リンパ球が24.0%であった

CD8+細胞の増加はみられず、CD4/CD8比は正常リンパ球で1.19、異型リンパ球で1.23と正常範囲であった

CD4+異型リンパ球の86.3%がCD45RO+であった

HAV感染に伴う異型リンパ球症はヘルパーT細胞の役割が重要と考えられた


同じ異型リンパ球の増加でも、etiologyによって免疫形質に違いがあるようです。

実臨床では異型リンパ球のFCMを行うことはないと思いますが、背景の免疫病態が推察できて興味深いですね。

  • 異型リンパ球の割合が高いほどEBVによる伝染性単核球症の可能性が高い
  • Etiologyによって異型リンパ球の免疫形質に違いがある

まとめ

異型リンパ球の特徴や臨床的な意義についてまとめました。

伝染性単核球症が有名ですが、特異性は低く、割合が少ない場合は他の疾患も鑑別に挙げるべきです。

Answer

あわせて読みたい参考書籍

Sponsored Link

コメントを残す

*

CAPTCHA