血液培養は2セット採取することが基本です。
通常は末梢静脈から2セット採取することが多いと思いますが、集中治療症例など動脈カテーテルが挿入されている場合はそこからの採取も検討されます。
特に重症例では四肢の浮腫が強く末梢からは採取できないこともしばしばあります。
今回は血液培養を動脈カテーテルから採取した場合のメリットやデメリットを調べました。
動脈と静脈で感度や特異度に違いはあるか?
Clinical utility of blood cultures drawn from central venous or arterial catheters in critically ill surgical patients
Jose A Martinez, Jeffrey A DesJardin, Michael Aronoff et al.
Crit Care Med. 2002 Jan;30(1):7-13. doi: 10.1097/00003246-200201000-00002.
外科系重症例で中心静脈カテーテルもしくは動脈カテーテルと末梢静脈からの血液培養を比較
動脈カテーテルと末梢静脈の感度・特異度は同等であった
動脈:感度 71% (95%CI 45–94)、特異度 98% (95%CI 96–99)
静脈:感度 71% (95%CI 45–93)、特異度 98% (95%CI 96–99)
Blood Cultures Drawn From Arterial Catheters Are Reliable for the Detection of Bloodstream Infection in Critically Ill Children
Itay Berger, Merav Gil Margolis, Elhanan Nahum et al.
Pediatr Crit Care Med. 2018 May;19(5):e213-e218. doi: 10.1097/PCC.0000000000001462.
PICUの小児患者で動脈カテーテルと末梢静脈とからの血液培養を比較
感度・特異度に有意差はなかった
動脈:感度 85.4% (95%CI 71–94)、特異度 95.3% (95%CI 92–98)
静脈:感度 80.5% (95%CI 65–91)、特異度 98.3% (95%CI 96–99)
Contamination of Blood Cultures From Arterial Catheters and Peripheral Venipuncture in Critically Ill Patients: A Prospective Multicenter Diagnostic Study
Izumi Nakayama, Junichi Izawa, Koichiro Gibo et al.
Chest. 2023 Jan 30;S0012-3692(23)00161-7. doi: 10.1016/j.chest.2023.01.030.
国内複数施設のICUで動脈カテーテルと末梢静脈からの血液培養を比較
動脈カテーテルと末梢静脈の感度・特異度は同等であった
動脈:感度 75.6% (95%CI 59.7–87.6)、特異度 99.6% (95%CI 98.7–100.0)
静脈:感度 78.0% (95%CI 62.3–89.4)、特異度 99.2% (95%CI 98.1–99.8)
Arterial blood culture to hasten the diagnosis of candidemia in critically ill patients
Carlo Tascini, Francesco Sbrana, Gianluigi Cardinali et al.
Intensive Care Med. 2014 Jul;40(7):1059-60. doi: 10.1007/s00134-014-3336-2.
培養が動脈・静脈から採取されたCandida血症13例に関する後ろ向き研究
培養陽性までの時間は動脈血で中央値 25.35 h (IQR 22.23-32.87)、静脈血で中央値 25.35 h (IQR 26.68-43.09)であった (p = 0.013)
Candida spp.が代謝に酸素を要すること、CO2濃度が高いと酵母から糸状に移行しやすいことが関連しているかもしれない
動脈カテーテルからの血液培養採取に関する研究は複数ありますが、検査の感度・特異度は末梢静脈からの採取と差はないようでした。
Candida血症で動脈血・静脈血の差があったのは非常に興味深いです。
動脈血であることに関連した研究が他にもないか探しましたが、残念ながら見つかりませんでした。
- 動脈カテーテルからの血液培養採取の感度・特異度は末梢静脈からの採取と同等
動脈カテーテルからの採取でコンタミネーションは増えるか?
The use of the arterial line as a source for blood cultures
P D Levin, M Hersch, B Rudensky et al.
Intensive Care Med. 2000 Sep;26(9):1350-4. doi: 10.1007/s001340000607.
ICU患者で動脈カテーテルと末梢静脈からの血液培養を比較
動脈カテーテルで32% (88/270)、末梢静脈で16% (43/270)で陽性
動脈陽性・静脈陰性のグラム陽性菌のうち、60% (22/37)がコンタミネーション、40% (15/37)がカテーテルへの定着と判断された
動脈陽性・静脈陰性のグラム陰性菌のうち、28% (5/18)が真の菌血症、33% (6/18)がカテーテルへの定着、39% (7/18)の臨床的意義はないと判断された
Blood Cultures Drawn From Arterial Catheters Are Reliable for the Detection of Bloodstream Infection in Critically Ill Children
Itay Berger, Merav Gil Margolis, Elhanan Nahum et al.
Pediatr Crit Care Med. 2018 May;19(5):e213-e218. doi: 10.1097/PCC.0000000000001462.
PICUの小児患者で動脈カテーテルと末梢静脈とからの血液培養を比較
コンタミネーションは動脈カテーテルの方が多かった (4% vs 1.5%)
Contamination of Blood Cultures From Arterial Catheters and Peripheral Venipuncture in Critically Ill Patients: A Prospective Multicenter Diagnostic Study
Izumi Nakayama, Junichi Izawa, Koichiro Gibo et al.
Chest. 2023 Jan 30;S0012-3692(23)00161-7. doi: 10.1016/j.chest.2023.01.030.
国内複数施設のICUで動脈カテーテルと末梢静脈からの血液培養を比較
コンタミネーションは動脈カテーテルで0.34%、末梢静脈で 0.70%であった (※非劣性マージン +2.0%)
コンタミネーション率については研究によっては動脈カテーテルの方が高いようです。
国内の研究では高くなかったことから、カテーテルの管理や採決時の清潔手技の問題と思われます。
- コンタミネーション率は研究によって動脈カテーテルの方が高い
まとめ
動脈カテーテルからの血液培養採取について調べました。
感度・特異度は末梢静脈と同等ですが、コンタミネーションに注意した管理・手技に気をつける必要があります。