Infection

CDIの白血球増多の病態や有用性は?

Answer

CDI (Clostridioides difficile infection)抗菌薬投与に関連して起こりやすい下痢症で、感染症治療中にみられることが多いです。

下痢や発熱といった腸炎症状に加え、白血球増多が生じやすいことが特徴です。

一般的に感染症などの炎症性疾患では好中球が上昇しやすいですが、CDIでは特に上昇しやすいと言われています。

今回はCDIの白血球増多について、病態や診断・予後因子としての有用性をまとめました。

病態

Colonic immunopathogenesis of Clostridium difficile infections
Charles Darkoh, Bradley P Turnwald, Hoonmo L Koo et al.
Clin Vaccine Immunol. 2014 Apr;21(4):509-17. doi: 10.1128/CVI.00770-13.

Clostridium difficileによる下痢便とその他の下痢便に含まれるバイオマーカーを評価

Clostridium difficile感染ではC5a、CD40L、G-CSF、I-309、IL-13、IL-16、IL-27、MCP1、TNFα、IL-8が相対的に多かった


Clostridium difficile toxin A stimulates intracellular calcium release and chemotactic response in human granulocytes
C Pothoulakis, R Sullivan, D A Melnick et al.
J Clin Invest. 1988 Jun;81(6):1741-5. doi: 10.1172/JCI113514.

顆粒球に対するトキシンの作用を検証したin vitroの実験

トキシンAによる顆粒球の遊走が確認された


Human neutrophils are activated by a peptide fragment of Clostridium difficile toxin B presumably via formyl peptide receptor
Sebastian D Goy, Alexandra Olling, Detlef Neumann et al.
Cell Microbiol. 2015 Jun;17(6):893-909. doi: 10.1111/cmi.12410.

好中球に対するトキシンの作用を検証したin vitroの実験

トキシンBによる細胞内Ca2+、活性酸素の増加が確認された


CDIでは他の下痢症に比べてサイトカインが多かったと報告されています。

また、Clostridioides difficileの病原因子としてトキシンA/Bが有名ですが、トキシンによる好中球の遊走や活性化も関連しているかもしれません。

  • CDIでは他の下痢症に比べサイトカインが多いとの報告がある
  • トキシンによる好中球の遊走、活性化が報告されている

CDIの白血球増多の有用性は?

診断

Leukocytosis as a harbinger and surrogate marker of Clostridium difficile infection in hospitalized patients with diarrhea
M Bulusu, S Narayan, K Shetler et al.
Am J Gastroenterol. 2000 Nov;95(11):3137-41. doi: 10.1111/j.1572-0241.2000.03284.x.

抗菌薬投与後の下痢症例でCDトキシン陽性例(図左)と陰性例(図右)を比較

陽性例では白血球のピークが有意に高かった (p < 0.01)

陽性例で白血球の推移は3パターンあった
A:下痢と同時に急激な白血球増加
B:下痢に先行して急激な白血球増加
C:下痢に先行して緩徐な白血球増加


Predictive factors of Clostridioides difficile infection in hospitalized patients with new diarrhea: A retrospective cohort study
Koray K Demir, Matthew P Cheng, Todd C Lee.
PLoS One. 2018 Dec 5;13(12):e0207128. doi: 10.1371/journal.pone.0207128.

CDI以外の理由で入院後の下痢で拡散増幅検査を受けた248例を評価

白血球はCDI (n=33)で有意に高かった
白血球 ≥11×109 /Lオッズ比 3.43 (95%CI 1.43-8.26, P値 0.006)


Prevalence of Clostridioides difficile Infection in Critically Ill Patients with Extreme Leukocytosis and Diarrhea
Bijan Teja, Nafeesa Alibhai, Gordon D Rubenfeld et al.
Infect Dis Rep. 2021 Jan 1;13(1):18-22. doi: 10.3390/idr13010003.

下痢がありCDI検査を受けたICU症例 8659例のうち、7.9% (685/8659)で陽性だった

CDI検査前の白血球ピークは陽性例で有意に高かった
中央値×103 /µL (IQR) 17.8±11.0 vs 15.5±8.6 (p<0.001)

CDI検査前3日以内の白血球ピークが≥30,000 /µLであった534例のうち 15.0% (80/534)で陽性だった


Conditions associated with leukocytosis in a tertiary care hospital, with particular attention to the role of infection caused by clostridium difficile
Anna Wanahita, Elizabeth A Goldsmith, Daniel M Musher.
Clin Infect Dis. 2002 Jun 15;34(12):1585-92. doi: 10.1086/340536.

白血球 15,000-19,999 /mm3の入院患者 200例と≥20,000 /mm3の入院患者 200例を評価

207例が感染症で、そのうち34例がCDIだった

白血球 ≥30,000 /mm3の感染症の34% (11/32)がCDIだった


CDIでは白血球増多が多くみられます。

概ね10,000 /µLを超えており、30,000 /µLを超えると他の疾患に比べてCDIの頻度が高くなります。

下痢に先行して白血球増多がみられる場合もあり、感染症治療中に予期せぬ白血球増多がみられた場合はCDIを疑うべきかと思います。

予後

Risk factors for recurrence, complications and mortality in Clostridium difficile infection: a systematic review
Claire Nour Abou Chakra, Jacques Pepin, Stephanie Sirard et al.
PLoS One. 2014 Jun 4;9(6):e98400. doi: 10.1371/journal.pone.0098400.

CDIの再発、重症化、死亡のリスク因子についてのシステマティックレビュー

白血球増多は重症化、死亡のリスク因子であった

重症化(改変)
死亡(改変)

白血球増多は重症化、死亡のリスク因子であり、20,000 /µLを超えると特にリスクが高そうです。

  • 概ね10,000 /µLを超え、30,000 /µLを超えると他の疾患に比べてCDIの頻度が高い
  • 下痢に先行して白血球増多がみられる場合もある
  • 白血球増多は重症化、死亡のリスク因子

まとめ

CDIでみられる白血球増多についてまとめました。

感染管理の観点からCDIは早期に発見したいため、感染症治療中に予期せぬ白血球増多がみられた場合は積極的にCD検査を行うべきと思います。

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