けいれん発作はてんかんで起こることもあれば頭蓋内疾患や全身性疾患など様々な誘因で起こります。
特に髄膜炎など中枢の炎症性疾患を疑った時には髄液検査を行いますが、けいれんそのものによる影響はどのくらいあるのでしょうか。
今回はけいれん発作でみられる髄液所見をまとめました。
けいれん発作でみられる髄液所見は?
Cerebrospinal fluid analysis after unprovoked first seizure
Vaso Zisimopoulou, Margarita Mamali, Serafeim Katsavos et al.
Funct Neurol. 2016 Apr-Jun;31(2):101-7. doi: 10.11138/fneur/2016.31.2.101.
誘因のない初回のけいれん発作 71例の髄液を評価
腰椎穿刺は発作後24時間以内に施行
細胞増多は9.9% (最高値 40 /µL)、蛋白増加は31% (最高値 95 mg/dL)でみられた

Cerebrospinal fluid changes following epileptic seizures unrelated to inflammation
M Süße, N Saathoff, M Hannich et al.
Eur J Neurol. 2019 Jul;26(7):1006-1012. doi: 10.1111/ene.13924.
炎症性疾患でない新規のてんかん発作 247例の髄液を評価
腰椎穿刺は平均で発作後36-48時間に施行
細胞増多は4% (最高値 28 /µL)、蛋白増加は51% (最高値 2003 mg/L)でみられた
Effect of epileptic seizures on the cerebrospinal fluid–A systematic retrospective analysis
Hayrettin Tumani, Catherine Jobs, Johannes Brettschneider et al.
Epilepsy Res. 2015 Aug:114:23-31. doi: 10.1016/j.eplepsyres.2015.04.004.
てんかん発作 309例 (症候性 176 122例、潜因性 133例)の髄液を評価
腰椎穿刺は中央値で発作後1.74日に施行
細胞増多はてんかん発作の6% (最高値 24 /µL)でみられた
発作から1日以内の検査で7% (14/196)、2日以降の検査で3.5% (4/113)で上昇していた
発作の持続時間では有意な変動はなかった
Cerebrospinal fluid findings in non-infectious status epilepticus
M P Malter, S Choi, G R Fink et al.
Epilepsy Res. 2018 Feb:140:61-65. doi: 10.1016/j.eplepsyres.2017.12.008.
非感染性のてんかん重積 54例 (症候性 41例、潜因性 13例)の髄液を評価
腰椎穿刺は中央値で発作後19.6時間(範囲 2-169時間)に施行
細胞増多は6% (最高値 25 /µL)、蛋白増加は44% (最高値 1.09 g/L)でみられた
炎症などの背景がなくても、けいれん発作の一部で細胞増多や蛋白増加がみられるようです。
細胞数はさほど多くなく、数十個程度ですが、炎症性疾患との鑑別に苦慮しそうです。
- けいれん発作の一部で細胞増多や蛋白増加がみられる
- 細胞数は多くて数十個程度
炎症性疾患との鑑別は?
Cerebrospinal Fluid Pleocytosis in Critical Care Patients With Seizures
Carly Scramstad, Alan C Jackson.
Can J Neurol Sci. 2017 Jul;44(4):343-349. doi: 10.1017/cjn.2016.442.
集中治療を受けたてんかん重積 51例の髄液を評価
腰椎穿刺は平均で発作後36.7時間に施行
細胞増多は12例でみられた
炎症性疾患・感染症は5例で細胞数は 6-117 /µL
その他の疾患は7例で細胞数は 6-26 /µL

Cerebrospinal Fluid Pleocytosis Not Attributable to Status Epilepticus in First 24 Hours
Sargun Bajaj, Donald Griesdale, Yahya Agha-Khani et al.
Can J Neurol Sci. 2022 Mar;49(2):210-217. doi: 10.1017/cjn.2021.83.
集中治療を受けたてんかん重積 111例の髄液を評価
腰椎穿刺を受けたタイミングで24時間以内(72例)、24-48時間(18例)、48-120時間(21例)に分けて比較
細胞増多は24時間以内の症例で 17% (12/72)、24-48時間で 11% (2/18)、48-120時間で 19% (4/21)にみられた
24時間以内の検査で細胞増多がみられた12例では、発作そのもの以外に細胞増多の原因となりうる背景があった

24-48時間の症例では2例ともけいれん発作以外の細胞増多の原因は特定できなかった
48-120時間の症例では2例は自己免疫性脳炎であったが、2例は特定できなかった
炎症性疾患の方が細胞数は多い傾向がありますが、少数のこともあり断定は難しいです。
発症からの時間経過も参考にはなるようです。
- 炎症性疾患の方が細胞数は多い傾向があるが、細胞数のみでの区別は困難
まとめ
けいれん発作の髄液所見についてまとめました。
細胞増多がみられたときは髄膜炎としてのempiricalな治療をするか悩むことになりそうです。