General Internal Medicine

ヒスタミン中毒症・不耐症とは?

Answer

アナフィラキシーは救急外来などでよく見かける病態の一つです。

食物などの抗原に対するⅠ型アレルギーで、肥満細胞からヒスタミンが放出され蕁麻疹や呼吸困難、浮腫などの症状が起こります。

頻度は高くありませんが、アナフィラキシーとの鑑別で時々話題になるものに、ヒスタミン中毒症・不耐症があります。

いずれもヒスタミンによりアナフィラキシーとよく似た症状が生じます。

今回はこれらについて解説します。

ヒスタミン中毒症・不耐症の病歴や治療は?

病歴 1) 2)

食後20分-1時間で発症6-8時間で自然軽快する

倦怠感は1日以上続くことがある

ヒスタミンは血管拡張作用を有しており、頭痛や低血圧、動悸、喘息発作皮膚症状、消化器症状をきたす

アレルギーの既往はない

一緒に食事をとっていた人にも同様の症状がある

治療 1)

軽度~中等度の症状に対してはH1 blockerが有効

抗ヒスタミン薬の併用(H1 + H2)に関するエビデンスはないが、経験的に使用される

重症例ではエピネフリン筋注を行う


アナフィラキシーと同様にヒスタミンによる症状をきたすため、症状からはヒスタミン中毒症・不耐症とアナフィラキシーとの鑑別は困難です。

治療もヒスタミンの作用阻害が中心であり、基本的にはアナフィラキシーと同様です。

  • アナフィラキシーと同様にヒスタミンによる症状をきたす
  • 抗ヒスタミン薬、エピネフリンが有効

ヒスタミン中毒・不耐症の機序や原因は?

ヒスタミン中毒・不耐症の機序は?

ヒスタミンの代謝経路 3)

ヒスチジンからHistidine decarboxylase (HDC)によりヒスタミンに変換される

ヒスタミンはDiaminooxidase (DAO)、Histamine N-Methyltransferase (HNMT)によって代謝される

代謝産物がそれぞれAldehyde dehydrogenase (ALD)、Monoamine oxidase (MAO)、DAOにより更に代謝される

腸管でのヒスタミン分解 4)

通常量のヒスタミンは腸管上皮のDAO、HNMTによって不活化されるため、血中には少量しか移行しない (A)

中毒量(>500mg/kg)ではヒスタミンの分解が追い付かず、血中に移行し症状をきたす (B: 中毒症)

DAO、HNMTが少ない患者では通常量のヒスタミンでも分解しきれず血中に移行する (C: 不耐症)


ヒスタミン中毒症は過剰なヒスタミンの摂取によって、ヒスタミン不耐症はヒスタミン分解能の低下による相対的なヒスタミン過剰によってそれぞれ起こります。

ヒスタミン中毒症の原因になりやすい食品は?

魚類

細菌の持つHDCが海産物内でヒスチジンをヒスタミンに変換する 1)

筋肉にヒスチジンを多く含むマグロやサバなどの赤身魚、長距離を速く泳ぐ回遊魚で報告が多い

20℃以上で保存された魚では2,3時間で中毒域のヒスタミンが産生される

産生されたヒスタミンは温度変化に強く、加熱や冷凍で変化しない

2015-2020年に欧州の食品及び飼料に関する緊急警報システム(RASFF)に報告された魚類 2)

海産物にいるヒスタミンを合成する細菌 2)

ちなみに、国内で加工食品のヒスタミン含有量を調べた報告もあります 5)
大阪府域のスーパーなどの店頭で購入した刺身などの生食用鮮魚類6検体,開き干しおよびみりん
干しなどの魚類加工品12検体,魚類の油漬缶詰2検体の筋肉部
いずれの検体からもヒスタミンは検出されなかった

乳製品

乳製品でも細菌の代謝によりヒスタミンが蓄積する 6)

特に熟成チーズでヒスタミン含有が多い
※太字がヒスタミン合成能のある菌


ヒスタミンを含む食品は多くありますが、中毒症を起こすほどのヒスタミンを含有するには細菌のはたらきが必要になります。

ヒスタミン不耐症の原因は?

先天的・後天的要因 3) 4)

ヒスタミン不耐症の素因となるAOC1遺伝子のSNPsが報告されている

消化管疾患、慢性腎不全、ウイルス性肝炎、肝硬変、慢性蕁麻疹でDAO活性の低下が報告されている

補助因子としてはたらくビタミンB6、ビタミンC、銅の欠乏でDAOの活性が低下する

ヒスタミン代謝を阻害する食物・薬剤 3)

ヒスタミンを多く含む食物・遊離を促す食物 4)


ヒスタミン不耐症は遺伝や疾患、薬剤などでDAO活性が低下した状態でヒスタミン含有量の多い食物を摂取することで症状が起こります。

  • ヒスタミン中毒症は過剰なヒスタミンの摂取により起こる
  • ヒスタミン不耐症はヒスタミン分解能の低下による相対的なヒスタミン過剰で起こる

まとめ

ヒスタミン中毒症・不耐症についてまとめました。

よく似た症状のためアナフィラキシーに間違えられやすいですが、食事や薬剤の内容から気付くことができます。

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Reference

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    Charles Feng, Suzanne Teuber, M Eric Gershwin et al.
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  2. An Overview of Histamine and Other Biogenic Amines in Fish and Fish Products
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  3. Histamine Intolerance-The More We Know the Less We Know. A Review
    Martin Hrubisko, Radoslav Danis, Martin Huorka et al.
    Nutrients. 2021 Jun 29;13(7):2228. doi: 10.3390/nu13072228.
  4. Histamine, histamine intoxication and intolerance
    E Kovacova-Hanuskova, T Buday, S Gavliakova et al.
    Allergol Immunopathol (Madr). Sep-Oct 2015;43(5):498-506. doi: 10.1016/j.aller.2015.05.001.
  5. 大阪府におけるヒスタミン検査事例について
    粟津 薫, 高取 聡, 柿本 幸子ら.
    粟津 薫, 高取 聡, 柿本 幸子ら.
  6. Histamine accumulation in dairy products: Microbial causes, techniques for the detection of histamine-producing microbiota, and potential solutions
    Marta Moniente, Diego García-Gonzalo, Ignacio Ontañón et al.
    Compr Rev Food Sci Food Saf. 2021 Mar;20(2):1481-1523. doi: 10.1111/1541-4337.12704.

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