- 患者要因
- 女性で発症しやすいか? → 議論の余地あり
- やせ患者で発症しやすいか? → 議論の余地あり
- 新生児・小児でも起こるか? → Yes
- 高齢者では起こりにくいか? → Yes
- 慢性頭痛患者で発症しやすいか? → 議論の余地あり
- 基礎疾患や薬剤の影響はあるか? → No
- 穿刺針の選択や使い方
- ペンシル型は有効か? → Yes
- 穿刺針の太さは影響するか? → 議論の余地あり
- 穿刺針の扱いは影響するか? → 議論の余地あり
- ペンシル型での穿刺は難しいか? → No
- 腰椎穿刺の特別な手法
- 穿刺中の体位は影響するか? → Yes
- 好ましい椎間腔はあるか? → Yes
- 穿刺困難な場合はリスクが高いか? → No
- 採取する髄液の量は制限すべきか? → No
- 吸引での髄液採取はリスクになるか? → No
- 穿刺後
- 穿刺後は安静が必要か? → No
- 穿刺後の輸液は有効か? → No
- カフェインは予防に有効か? → No
- 予防に有効な薬剤はあるか? → 議論の余地あり
腰椎穿刺後頭痛は腰椎穿刺で最も多い合併症で、3.5-33%でみられると言われています。
髄液の持続的な漏出による頭蓋内低髄圧により生じる頭痛で、立位で増悪し、臥位で改善するのが特徴です。
2021年に発表された論文で、腰椎穿刺後頭痛の予防に関してよくまとめられていたので紹介します。
患者要因
女性で発症しやすいか? → 議論の余地あり
1つの研究で女性は男性に対して腰椎穿刺後頭痛のRR 2.58 (95% CI, 1.39 to 4.82) (P=.003)であった
他の複数の研究で有意差は検出されなかった
やせ患者で発症しやすいか? → 議論の余地あり
複数の研究でそれぞれBMI <20、<25が腰椎穿刺後頭痛のリスクとされたが、その後の研究で有意差は検出されなかった
新生児・小児でも起こるか? → Yes
小児での臨床診断は難しいが、成人と同程度で生じるとされている(12-15%)
高齢者では起こりにくいか? → Yes
ある研究で、若年者での腰椎穿刺後頭痛の頻度が15%だったのに対し、60歳以上では5%未満であった
認知機能低下や脳室拡大の影響が考えられる
慢性頭痛患者で発症しやすいか? → 議論の余地あり
ある研究では偏頭痛患者で腰椎穿刺後頭痛の頻度が少なかった(28% vs 44.9%)
別の多施設前向き研究では、軽度の頭痛患者ではOR 1.76 (1.16 to 2.59)、中等度~重度の頭痛患者ではOR 2.65 (1.88 to 3.74)であった
基礎疾患や薬剤の影響はあるか? → No
神経疾患やHIV患者で腰椎穿刺後頭痛の発症に有意差はなかった
薬剤はアスピリンのみ評価されており、単変量解析ではリスクを低減させた(RR 0.17 [0.04 to
0.73])が、多変量解析では有意でなかった
穿刺針の選択や使い方
ペンシル型(atraumatic)は有効か? → Yes
ペンシル型穿刺針の方が髄膜の損傷が少なく、髄液の漏出が少ない
2つのMeta-analysisでペンシル型の方が腰椎穿刺後頭痛のリスクが低かった
従来型でRR 2.14 (1.72 to 2.67)
ペンシル型でRR 0.4 (0.34 to 0.47)
穿刺針の太さは影響するか? → 議論の余地あり
Meta-analysisでは穿刺針の径と腰椎穿刺後頭痛の発症率に有意な関連はみられなかった
単施設の研究では25Gの方が22Gに比べ腰椎穿刺後頭痛の発症が少なかった (OR 0.65 [0.45 to 0.93])
穿刺針の扱いは影響するか? → 議論の余地あり
ペンシル型穿刺針では側孔にくも膜線維が引っ掛かり硬膜を損傷する恐れがある
これを避けるため、内筒を再挿入してから抜去することが有効と考えられる
ある前向き研究ではペンシル型穿刺針の内筒の再挿入で腰椎穿刺後頭痛が有意に減った(5% vs 16.3%; P<.005)
別の前向き研究では(ペンシル型・従来型ともに)有意差は検出できなかった
従来型ではMeta-analysisで斜角を脊椎の軸と平行にすることで腰椎穿刺後頭痛が有意に減少した (OR 0.29 [0.17 to 0.5])
ペンシル型での穿刺は難しいか? → No
いくつかの研究で、従来型と比較して成功率、試行回数、手技時間に影響はなかった
腰椎穿刺の特別な手法
穿刺中の体位は影響するか? → Yes
Meta-analysisで側臥位での穿刺が坐位での穿刺よりも腰椎穿刺後頭痛のリスクが低かった (RR 0.61 [0.44 to 0.86])
好ましい椎間腔はあるか? → Yes
後ろ向き研究で、下位椎間の方が腰椎穿刺後頭痛の頻度が高かった (L1/L2: 5.2%, L4/L5 16.2%)
穿刺困難な場合はリスクが高いか? → No
ある研究で、穿刺の試行回数や出血と腰椎穿刺後頭痛の関連はみられなかった
採取する髄液の量は制限すべきか? → No
5研究のうち1研究のみで髄液の採取量と腰椎穿刺後頭痛の関連がみられた
反対の結果がみられた研究もあった
17mL未満の採取で40.9%、17-30mLの採取で16.6%で頭痛が生じた
30mL以上採取された33例のうち頭痛を生じたのは3例のみ(9.1%)であった
吸引での髄液採取はリスクになるか? → No
5つの研究でシリンジでの吸引による髄液採取と自然滴下による採取で腰椎穿刺後頭痛の発症に有意差はみられなかった
穿刺後
穿刺後は安静が必要か? → No
Meta-analysisで穿刺後の臥位安静で腰椎穿刺後頭痛のリスクが高かった (RR 1.24 [1.05 to 1.48])
穿刺後の輸液は有効か? → No
Meta-analysisで輸液の腰椎穿刺後頭痛に対する予防効果はみられなかった
カフェインは予防に有効か? → No
エビデンスが不十分だが、少なくとも有効というエビデンスはない
予防に有効な薬剤はあるか? → 議論の余地あり
麻酔領域ではmorphine、cosyntrophine、aminophyllineの有効性が報告されているが、診断的腰椎穿刺に関する研究は不十分
まとめ
腰椎穿刺後頭痛の予防に関する論文を紹介しました。
個人的には、従来型穿刺針抜去前の内筒挿入と穿刺後の安静の予防効果が乏しいことが普段のプラクティスと異なることだったので勉強になりました。
- 患者要因
- 女性で発症しやすいか? → 議論の余地あり
- やせ患者で発症しやすいか? → 議論の余地あり
- 新生児・小児でも起こるか? → Yes
- 高齢者では起こりにくいか? → Yes
- 慢性頭痛患者で発症しやすいか? → 議論の余地あり
- 基礎疾患や薬剤の影響はあるか? → No
- 穿刺針の選択や使い方
- ペンシル型は有効か? → Yes
- 穿刺針の太さは影響するか? → 議論の余地あり
- 穿刺針の扱いは影響するか? → 議論の余地あり
- ペンシル型での穿刺は難しいか? → No
- 腰椎穿刺の特別な手法
- 穿刺中の体位は影響するか? → Yes
- 好ましい椎間腔はあるか? → Yes
- 穿刺困難な場合はリスクが高いか? → No
- 採取する髄液の量は制限すべきか? → No
- 吸引での髄液採取はリスクになるか? → No
- 穿刺後
- 穿刺後は安静が必要か? → No
- 穿刺後の輸液は有効か? → No
- カフェインは予防に有効か? → No
- 予防に有効な薬剤はあるか? → 議論の余地あり
Reference
- Preventing Post-Lumbar Puncture Headache
Emmanuel Cognat, Berengère Koehl, Matthieu Lilamand et al.
Ann Emerg Med. 2021 Sep;78(3):443-450. doi: 10.1016/j.annemergmed.2021.02.019.