MRSAスクリーニングはMRSAの拡大対策として行われており、「MRSA感染症の治療ガイドライン 2019年改訂版」でも院外からの持ち込みへの対策の一つとしてアクティブサーベイランスの有用性について述べられています。
「他医療機関や施設からの入院患者に対して」など、施設ごとの基準で運用されていると思いますが、入院時に採取されることが多く、選択培地での発育で判断するため結果が判明するのも他の培養より早いことがあります。
MRSAスクリーニングはあくまでも患者さんへの定着を検査するものですが、感染症でブドウ球菌が検出された場合にそれがMRSAかどうかを事前に予測することはできそうですよね。
そこで、今回はMRSAスクリーニングの結果を基に抗菌薬を選択(抗MRSA薬の使用するか否か)することができるのか考えてみました。
MRSAスクリーニングの精度は?
ますは、MRSAスクリーニング自体の精度や検体をどの部位から採取するのが良いのかについてまとめました。
5種類のブドウ球菌選択培地および7種類のMRSAスクリーニング培地の検出性能比較
藤 洋美, 德重 智絵美, 惠良 文義 ら.
医学検査. 2021;70(4): 685-690 doi: 10.14932/jamt.20-134.
MRSAスクリーニング培地7種類について、各培地のMRSA検出性能を薬剤感受性試験と比較
スクリーニング培地の陽性的中率は90%~100%、陰性的中率は94%~100%であった

Which anatomical sites should be sampled for screening of methicillin-resistant Staphylococcus aureus carriage by culture or by rapid PCR test
L Senn, P Basset, I Nahimana et al.
Clin Microbiol Infect. 2012 Feb;18(2):E31-3. doi: 10.1111/j.1469-0691.2011.03724.x.
MRSAスクリーニングの感度を検討
鼻腔・咽頭・鼠経を基本とし、場合により創部やカテーテルなどの検査を追加
12,456回のスクリーニングで1つでもMRSA陽性となったのは3,137回であった
鼻腔・咽頭・鼠経の3か所からの採取で感度は96%であった

MRSAスクリーニングは選択培地の発達もあり、精度の高い検査です。
ブドウ球菌の好む鼻腔・咽頭・鼠経のスクリーニングの感度が高く、当院で鼻腔・咽頭・鼠経を基本セットとしています。
- MRSAスクリーニングは精度の高い検査
- 鼻腔・咽頭・鼠経の3か所からの採取で感度は96%
MRSAスクリーニングは抗菌薬選択に使えるか?
それでは、実際にMRSAスクリーニングと感染症の関連について考えてみましょう。
感染症全般
Utility of prior screening for methicillin-resistant Staphylococcus aureus in predicting resistance of S. aureus infections
Derek R MacFadden, Marion Elligsen, Ari Robicsek et al.
CMAJ. 2013 Oct 15;185(15):E725-30. doi: 10.1503/cmaj.130364.
MRSAスクリーニングの結果がブドウ球菌感染症の感受性の予測に使えるか検討
スクリーニング:鼻腔・肛門周囲スワブ検体をMRSA選択培地で培養
スクリーニング陽性時のブドウ球菌感染症がMRSAであることについて
感度63% (95%CI 52-74%)、特異度99% (95%CI 98-100%)
スクリーニングから感染症検査が48時間以内の場合
感度91% (95%CI 71-99%)、特異度100% (95%CI 97-100%)
スクリーニングから感染症検査が14日以上の場合
感度46% (95%CI 28-66%)、特異度98% (95%CI 93-100%)
菌血症
Using MRSA Screening Tests To Predict Methicillin Resistance in Staphylococcus aureus Bacteremia
Guillaume Butler-Laporte, Matthew P Cheng, Alexandre P Cheng et al.
Antimicrob Agents Chemother. 2016 Nov 21;60(12):7444-7448. doi: 10.1128/AAC.01751-16.
MRSAスクリーニングでブドウ球菌菌血症がMRSAであることを予測できるか検討
スクリーニング:鼻腔(他部位でも可)スワブ検体をMRSA選択培地で培養
スクリーニングと血液培養のタイミングによって3つの基準で検討
30-Day criterion
陽性:血液培養前30日以内にスクリーニング陽性
陰性:血液培養前30日以内にスクリーニング陰性
Ever-positive criterion
陽性:血液培養以前のどこかでスクリーニング陽性
陰性:血液培養前30日以内にスクリーニング陰性
Known-positive criterion
陽性:血液培養以前のどこかでスクリーニング陽性
陰性:血液培養前30日以内にスクリーニング陰性、もしくはスクリーニング結果なし
MRSAの頻度が低ければNPVは90~95%を超えたが、PPVは50%を超える程度であった

Screening swabs surpass traditional risk factors as predictors of MRSA bacteremia
Guillaume Butler-Laporte, Matthew P Cheng, Emily G McDonald et al.
BMC Infect Dis. 2018 Jun 11;18(1):270. doi: 10.1186/s12879-018-3182-x.
ブドウ球菌菌血症がMRSAであることの予測因子を評価
患者背景や基礎疾患などの因子と比較し、MRSAスクリーニング陽性(30-Day criterion/Ever-positive criterion)が強い予測因子であった
LASSO回帰モデルではMRSAスクリーニング陽性が唯一の予測因子であった
肺炎
The Clinical Utility of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus (MRSA) Nasal Screening to Rule Out MRSA Pneumonia: A Diagnostic Meta-analysis With Antimicrobial Stewardship Implications
Diane M Parente, Cheston B Cunha, Eleftherios Mylonakis et al.
Clin Infect Dis. 2018 Jun 18;67(1):1-7. doi: 10.1093/cid/ciy024.
鼻腔MRSAスクリーニングとMRSA肺炎の関連を検討したMeta-analysis
2016年までの22研究、延べ5,163患者を組み入れ
鼻腔MRSAスクリーニングはMRSA肺炎に関する特異度・NPVが高く、除外に有用

市中肺炎,医療・介護関連肺炎における入院時鼻腔MRSA 培養検査の意義
豆鞘 伸昭, 冨岡 洋海, 俣木 陽子 ら.
日呼吸誌. 2017;6(3):136-143.
日本の救急病棟に入院したCAP/NHCAP 730例について、入院時鼻腔MRSA培養検査の意義を検討
鼻腔MRSA培養陽性例は91/730例 (12.5%)で、CAP 13/271例 (4.8%)、NHCAP 78/459例 (17.0%)と、有意にNHCAPで陽性率が高かった (p<0.01)
CAP/NHCAPともに鼻腔MRSA培養陽性群は、陰性群と比較し、喀痰MRSA培養検出率も有意に高い結果であった
CAP: 3/13 (23.1%) vs 3/258 (1.1%), p<0.01
NHCAP: 28/78 (35.9%) vs 9/381 (2.4%), p<0.01
報告によってスクリーニング方法が違ったり、国や地域によってMRSAの検出率が違ったりする点は注意が必要ですが、MRSAスクリーニングはブドウ球菌感染症でのMRSA予測に利用できそうです。
特にMRSAの頻度が低い場合にNPVが高くなるため、元々医療機関の受診歴がないなど、MRSAの分離率が低い患者群ではMRSAスクリーニング陰性でMRSA感染症を除外することができます。
- MRSAの分離率が低い患者群ではMRSAスクリーニング陰性でMRSA感染症を除外できる
まとめ
MRSAスクリーニングの有用性についてまとめました。
COVID-19患者さんなどウイルス性肺炎では2次性にブドウ球菌性肺炎を起こすことも多いですが、MRSAスクリーニング陰性であれば抗MRSA薬を使用しない、という戦略も一つではないでしょうか。