Infection

扁桃周囲膿瘍にステロイド投与は有効か?

Answer

“扁桃周囲膿瘍にステロイド投与は必要ですか?”

研修医の先生にこんなことを聞かれました。

腫脹が強いと閉塞しないか心配・・・。

抜管後喉頭浮腫など、上気道閉塞の場合にステロイド投与が有効な場合があるし・・・。

その場では即答できず、調べてみました。

扁桃周囲膿瘍とは?

まずは扁桃周囲膿瘍についておさらいします。


Peritonsillar Abscess
Nicholas J Galioto
Am Fam Physician. 2017 Apr 15;95(8):501-506.

扁桃周囲膿瘍は、扁桃の線維膜と上咽頭収縮筋の間隙に膿が溜まる疾患

発症機序は諸説ある
扁桃炎から脂肪織炎、膿瘍へと移行するという説
Weber腺(扁桃上方に位置する小唾液腺)の炎症が由来とする説

症状 身体所見
発熱 軟口蓋の発赤・腫脹、扁桃腫大、口蓋垂の変位
倦怠感 頸部リンパ節腫脹
嚥下障害 流涎
嚥下時痛 含み声
耳痛(片側) 腐臭
咽頭痛(片側で強い) 開口障害

治療はドレナージ、抗菌薬が中心

治療が不適切な場合、上気道閉塞、破裂した膿瘍の誤嚥、頸深部への進展といった重篤な合併症が生じうる


“膿瘍”という名の通り、穿刺排膿が治療の第一選択になります。

ステロイド投与は有効か?

それでは、本題に移ります。


Corticosteroids in peritonsillar abscess treatment: a blinded placebo-controlled clinical trial
Jason K M Chau, Hadi R Seikaly, Jeffery R Harris et al.
Laryngoscope. 2014 Jan;124(1):97-103. doi: 10.1002/lary.24283.

カナダの2施設の救急外来で扁桃周囲膿瘍に対するステロイドの効果を検討した研究

介入群にはクリンダマイシンに加えデキサメタゾン 10mgを単回投与

デキサメタゾン投与群では24時間時点での疼痛スコアが有意に低かった
1.4 vs. 5.1; P = .009

この差は48時間、7日時点ではみられなかった


The Efficacy of Corticosteroids in the Treatment of Peritonsillar Abscess: A Meta-Analysis
Yeon Ji Lee, Yeon Min Jeong, Ho Seok Lee
Clin Exp Otorhinolaryngol. 2016 Jun;9(2):89-97. doi: 10.21053/ceo.2014.01851.

扁桃周囲膿瘍に対するステロイドの効果を検討したメタアナリシス

上の論文も含む3研究が対象

治療後5日以内の退院はステロイド群で有意に多かった

24時間時点での活動度や経口摂取はステロイド群で良好な傾向があったが、48時間時点では差はみられなかった


扁桃周囲膿瘍に対するステロイドに関する研究は非常に少ないです。

現時点ではあくまでも補助療法としての位置づけのようです。

上気道閉塞が心配な場合には、ステロイドで粘るよりも気道確保をした方が良いかもしれません。

  • 扁桃周囲膿瘍に対するステロイドは、短期の症状緩和に有効な可能性がある

まとめ

扁桃周囲膿瘍に対するステロイドの有用性についてまとめした。

扁桃周囲膿瘍は上気道閉塞もきたしうる疾患で、炎症を和らげるためにステロイド、という気持ちにもなりますよね。

現時点ではステロイドの効果は症状緩和にとどまるようです。

治療には穿刺排膿を優先すべきですね。

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