General Internal Medicine

比較的徐脈がみられる疾患や機序は?

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比較的徐脈は感染症、非感染症含め様々な疾患で言及される所見で、鑑別を絞る参考になります。

ところで、比較的徐脈はどうして起こるのでしょうか?
今回は、比較的徐脈の基準や比較的徐脈がみられる疾患、現在考えられている機序についてまとめました。

比較的徐脈の基準やみられる疾患は?

比較的徐脈の基準は?

The diagnostic significance of relative bradycardia in infectious disease
B A Cunha.
Clin Microbiol Infect. 2000 Dec;6(12):633-4. doi: 10.1046/j.1469-0691.2000.0194f.x.

生理学的に、1℉(約0.6℃)の体温上昇で脈拍は10 beats/min上昇する
※セ氏では1℃で20 beats/minの上昇ということが多い

この体温上昇に合わせた脈拍上昇がみられない場合に、脈拍と体温の解離があると表現する

更に以下の条件を満たした場合に比較的徐脈という
13歳以上
体温 ≥102℉(38.9℃)
※102℉以下では脈拍と体温の解離が判断しにくいため、比較的徐脈という用語は体温102℉以上の場合に用いる
体温と脈拍を同時に測定する
正常洞調律
β-blockerを使用していない
※CCBはβ-blockerと異なり脈拍-体温関係に影響を与えない

下の表で脈拍が体温に対応する数値以下の場合に比較的徐脈という


文献にもよりますが、厳密に比較的徐脈というと体温が38.9℃以上の場合を指します。
なかなかそこまで体温が上がらないことも多いので、熱型表で体温・脈拍の連動がみられない場合は比較的徐脈を呈する疾患を疑ってもよいと思います。

次に比較的徐脈がみられる疾患をまとめました。

比較的徐脈がみられる疾患は?

The Clinical Significance of Relative Bradycardia
Fan Ye, Mohamad Hatahet, Mohamed A Youniss et al.
WMJ. 2018 Jun;117(2):73-78.

ケースシリーズを集積し検討
※症例数が少なく、報告毎に比較的徐脈の基準も異なる


細菌感染症では細胞内寄生菌でみられることが多いです。
ウイルス感染症でもよくみられ、最近ではCOVID-19でもみられるという報告もあります。
(Ikeuchi K et al. Emerg Infect Dis. 2020; 26: 2504–6.)

薬剤熱などの非感染症でもみられることがあります。

いずれもまとまった報告が少なく頻度にばらつきがあります。
診断の決め手というよりは参考所見という位置づけだと思います。

  • 体温102℉(38.9℃)以上の場合に1℉(約0.6℃)毎に10 beats/minの脈拍上昇がみられない場合に比較的徐脈という
  • 様々な疾患でみられるが、頻度にばらつきがある

比較的徐脈の機序は?

Proposed mechanisms of relative bradycardia
Fan Ye, David Winchester, Carolyn Stalvey et al.
Med Hypotheses. 2018 Oct;119:63-67. doi: 10.1016/j.mehy.2018.07.014.

比較的徐脈はグラム陰性細胞内寄生菌で言及されることが多いが、細胞外グラム陰性菌であるLeptospiraでもみられたり、細胞内寄生菌であるBrucellaではみられなかったりするため、細菌に関することだけでは比較的徐脈の機序を説明しきれない

リンパ腫や薬剤性などの非感染性の原因についても、比較的徐脈の機序は説明されていない

ある種の疾患にみられる比較的徐脈は、自律神経系免疫系のクロストークによる逆説的な現象と考えられる
炎症性サイトカインが心臓のペースメーカー細胞に作用し、心拍の変調や神経伝達物質への反応性の変化をきたしているのかもしれない
炎症により交感神経・迷走反射活動の不均衡圧反射機能の異常が生じることが示唆される
種々のサイトカインが神経伝達を阻害し自律神経活動を変調させることで、迷走神経活動が亢進し、交感神経・迷走反射活動のバランスが崩れると考えられる


今のところは仮説の域を出ませんが、免疫・炎症と自律神経の関連が考えられています。
心筋や洞結節への直接的・間接的な影響もあるかもしれません。

今後の研究に期待しましょう。

  • 比較的徐脈の機序はわかっていない
  • 自律神経系と免疫系の関連が示唆されている

まとめ

比較的徐脈についてまとめました。

残念ながら機序はまだ判明していませんが、ある種の感染症やリンパ腫、薬剤熱など鑑別診断の助けになる所見です。

発熱患者さん、特に入院中では熱型表に注意してみましょう。

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