Cardiology

けいれん発作のアンモニア上昇の機序や有用性は?

Answer

けいれん発作ではしばしばアンモニアの上昇がみられ、一過性意識消失との鑑別に使うことがあります。

今回はけいれん発作時のアンモニア上昇の機序や有用性についてまとめました。

けいれん発作でアンモニアが上昇する機序は?

Ammonia production in muscle and other tissues: the purine nucleotide cycle
J M Lowenstein.
Physiol Rev. 1972 Apr;52(2):382-414. doi: 10.1152/physrev.1972.52.2.382.

筋細胞内でATPの代謝でAMPが産生される

AMPはプリンヌクレオチド回路でAMPデアミナーゼにより代謝され、アンモニアが産生される


Exercise-induced hyperammonemia: peripheral and central effects
E W Banister, B J Cameron.
Int J Sports Med. 1990 May:11 Suppl 2:S129-42. doi: 10.1055/s-2007-1024864.

運動により主に骨格筋でのプリンヌクレオチド回路が亢進し、アンモニア濃度が上昇する


Hyperammonemia in idiopathic epileptic seizure
Kensuke Nakamura, Kiyomi Yamane, Kazuaki Shinohara et al.
Am J Emerg Med. 2013 Oct;31(10):1486-9. doi: 10.1016/j.ajem.2013.08.003.

特発性もしくは脳血管疾患によるてんかん発作 52例のアンモニアを評価

42.3% (22/52)で高アンモニア血症(>35 µmol/L)がみられた

アンモニアとpHの逆相関がみられた

心肺停止、ショック状態でもpHと逆相関する高アンモニア血症がみられ、アシドーシスの影響で主に赤血球のAMPデアミナーゼによってアンモニアが産生されると考えられる
けいれんにおいて、筋収縮だけではなくアシドーシス環境になった赤血球もアンモニアの由来と考えられる


アンモニアは主に筋収縮によるATP消費で産生されたAMPがプリンヌクレオチド回路で代謝されることによって生じます。

アシドーシスによって赤血球でも産生されると考えられています。

  • アンモニアは主に筋収縮によるATP消費で産生されたAMPがプリンヌクレオチド回路で代謝されることによって生じる
  • アシドーシスによって赤血球でも産生されると考えられている

けいれん発作で高アンモニア血症の意義は?

けいれん発作と他の意識障害の鑑別

Clinical significance of plasma ammonia in patients with generalized convulsion
Kouichi Tomita, Norio Otani, Fumio Omata et al.
Intern Med. 2011;50(20):2297-301. doi: 10.2169/internalmedicine.50.5950.

けいれん・意識消失の症例のうち、けいれん群(目撃あり) 207例と非けいれん群(詳細不明もしくは目撃なし) 86例の比較

けいれん群では非けいれん群と比べてアンモニアが高値であった
90±77 µg/dL vs 45±33 µg/dL (p<0.01)

カットオフ値 65 µg/dLで感度 53%、特異度 90%


Postictal transient hyperammonemia as an indicator of seizure disorder
Kuan-Ting Liu, Chi-Wei Lee, Shih-Chia Yang et al.
Eur Neurol. 2010;64(1):46-50. doi: 10.1159/000315034.

けいれん症例 31例とけいれんのない意識障害症例 51例を比較

けいれん群では61.3% (19/31)で高アンモニア血症(>80 µg/L)がみられた
数時間以内の再検で全例自然な低下がみられ、17/19例で100 µg/L以上もしくは正常域まで低下した

非けいれん群では19.6% (10/51)で高アンモニア血症がみられたが、肝硬変による肝性脳症であった
翌日の再検でも全例で正常域まで低下しなかった


アンモニア高値は他の意識障害との鑑別に有用です。

肝性脳症でもアンモニア高値がみられますが、けいれん発作では自然に低下する経過をとります。

痙攣様式の評価

Postictal ammonia as a biomarker for electrographic convulsive seizures: A prospective study
Rawan Albadareen, Gary Gronseth, Patrick Landazuri et al.
Epilepsia. 2016 Aug;57(8):1221-7. doi: 10.1111/epi.13426.

てんかんユニットに入院した30例(部分発作 8例、全般発作 13例、PNES 9例)でけいれん発作前後のアンモニア値を比較
肝性脳症、肝硬変、5-FU使用、バルプロ酸使用、消化管出血、血液疾患、腎不全を除外

全般発作で発作前と比較して発作後の有意な上昇がみられた
発作前-発作後 中央値 28µmol/L (IQR 82), p = 0.004


Transient hyperammonemia in seizures: a prospective study
Tzu-Yao Hung, Chien-Chih Chen, Tzong-Luen Wang et al.
Epilepsia. 2011 Nov;52(11):2043-9. doi: 10.1111/j.1528-1167.2011.03279.x.

けいれん発作を目撃された救急症例 121例のアンモニアを評価
肝性脳症、肝硬変、腎不全、5-FU使用、バルプロ酸使用を除外

高アンモニア血症(カットオフ値 94 µg/dL)は67.8% (82/121)でみられた

全般性発作では非全般性発作よりも高アンモニア血症の頻度、中央値が高かった
頻度 76.5% vs 21.2%、中央値 174.5 µg/dL vs 47 µg/dL (p<0.0001)

来院時高値で再検された43例では中央値で250 µg/dLから53 µg/dLへの低下がみられた
平均で466.79分で71.0%の低下


Hyperammonaemia and associated factors in unprovoked convulsive seizures: A cross-sectional study
Kenichiro Sato, Noritoshi Arai, Aki Omori et al.
Seizure. 2016 Dec:43:6-12. doi: 10.1016/j.seizure.2016.09.015.

救急外来で誘因のないけいれん発作として治療された症例の検討

48.3% (183/379)で高アンモニア血症(カットオフ値 50 µg/dL)がみられた

発作時間が30分以上の症例は高アンモニア血症で優位に多かった
16.9% (31/183) vs 6.6% (13/196), p=0.002

多変量解析で発作時間は高アンモニア血症と関連がみられた
1分ごとにOR 1.03 (95%CI 1-1.06), p=0.026


けいれん発作の発作様式や持続時間とも関連しており、イメージ通りではありますが、筋収縮が盛んに起こる全般発作重積では高値になりやすいようです。

  • 他の意識障害との鑑別に有用
  • 全般発作や重積では高値になりやすい

まとめ

けいれん発作でみられるアンモニア高値についてまとめました。

発作の目撃のない症例では特に鑑別に役立つと思います。

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