Rheumatology

強皮症でみられる爪郭のダーモスコピー所見は?

Answer

爪郭毛細血管異常は強皮症の重要な所見の一つで、2013 ACR/EULAR によるSSc 分類基準にも含まれています。

文献的には爪郭毛細血管の観察は高倍率(×200)の毛細血管スコープ(capillaroscopy)がゴールドスタンダードのよう

ただし、特殊な機械のため内科医にはハードルが高く、ダーモスコープで代用している先生方も多いのではないでしょうか。

今回は強皮症でみられる爪郭のダーモスコピー所見についてまとめました。

強皮症の爪郭毛細血管異常所見は?

Nailfold capillaroscopy with USB dermatoscope: A cross-sectional study in healthy adults
Deepak Jakhar, Chander Grover, Archana Singal.
Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2020 Jan-Feb;86(1):33-38. doi: 10.4103/ijdvl.IJDVL_240_18.

爪郭毛細血管でみられる異常所見の定義
蛇行毛細血管
 Tortuous capillary:蛇行するが交差しない、蛇行する血管が5%未満は正常
 Meandering capillary:血管が交差する
拡張毛細血管:正常毛細血管の2倍以上の太さ
巨大毛細血管:正常毛細血管の10倍以上の太さ
血管新生/樹枝状毛細血管:毛細血管ループの遠位に小さい複数の分枝
限局性微小出血:単独の微小出血
びまん性微小出血:複数の微小出血の一群
毛細血管消失:単独の毛細血管の消失
無血管野:2つ以上の近接する毛細血管ループの消失
異常毛細血管:上記に当てはまらない異型


Dermoscopy findings of nail fold capillaries in connective tissue disease
Minoru Hasegawa.
J Dermatol. 2011 Jan;38(1):66-70. doi: 10.1111/j.1346-8138.2010.01092.x.

強皮症における毛細血管スコープ所見のパターン

強皮症のダーモスコピー所見
正常 (A):均一な毛細血管の配列
Early pattern (B):軽度の構築の乱れ
Active pattern (C):拡張・巨大毛細血管(細矢印)、出血(太矢印)
Late pattern (D):無血管野(太矢印)、分枝状毛細血管(細矢印)


爪郭毛細血管異常は様々ありますが、強皮症の病勢とも関連があります。

おそらくダーもスコープで全ての所見を細かく観察することは難しく、主に血管の構築、太さ、分布に注目するのが良いと思います。

  • ダーモスコープで爪郭毛細血管の構築、太さ、分布の異常を観察できる

ダーモスコピーの有用性は?

毛細血管スコープとの比較

A study comparing videocapillaroscopy and dermoscopy in the assessment of nailfold capillaries in patients with systemic sclerosis-spectrum disorders
Michael Hughes, Tonia Moore, Neil O’Leary et al.
Rheumatology (Oxford). 2015 Aug;54(8):1435-42. doi: 10.1093/rheumatology/keu533.

強皮症患者の爪郭ビデオ毛細血管スコープ(NVC)とダーモスコープの爪郭毛細血管写真を48人の医師が評価

A・B:NVC、C・D:ダーモスコープ

NVCでは14.1%、ダーモスコープでは27.4%が評価困難であった

評価可能なものではNVCの方が重症度が高い評価になる傾向であった


Assessment of nailfold capillaroscopy in systemic sclerosis by different optical magnification methods
N G Mazzotti, M Bredemeier, C V Brenol et al.
Clin Exp Dermatol. 2014 Mar;39(2):135-41. doi: 10.1111/ced.12254.

ゴールドスタンダードの毛細血管スコープ(SNFC)と非偏光接触型ダーモスコープ(NPCD)、偏光非接触型ダーモスコープ(PNCD)を用いた強皮症患者の爪郭毛細血管像を比較
※DermLite® DL100はPNCD

Patient 1:血管拡張、密度の低下、無血管領域
Patient 2:血管拡張、構造不整、微小出血
Patient 3:無血管領域に囲まれた不整な血管


The assessment of nailfold capillaries: comparison of dermoscopy and nailfold videocapillaroscopy
Graham Dinsdale, Sebastien Peytrignet, Tonia Moore et al.
Rheumatology (Oxford). 2018 Jun 1;57(6):1115-1116. doi: 10.1093/rheumatology/key018.

強皮症 99例と健常者+原発性Raynaud症候群 50+21例の爪郭毛細血管を評価
ダーモスコープ (×10)とビデオ毛細血管スコープを比較

強皮症パターンの検出に関して、ダーモスコープの感度 60.2%、特異度 92.5%、NVCの感度 81.6%、特異度 84.6%であった


The handheld dermatoscope as a nail-fold capillaroscopic instrument
Reuven Bergman, Laura Sharony, Dan Schapira et al.
Arch Dermatol. 2003 Aug;139(8):1027-30. doi: 10.1001/archderm.139.8.1027.

膠原病科の患者 106例 (強皮症 27例、皮膚筋炎 11例、SLE 22例、MCTD 8例、Raynaud現象 38例)と健常者 170例の爪郭毛細血管を評価
強皮症・皮膚筋炎(SD)パターン:2指以上で2つ以上の異常所見 (毛細血管ループの拡張、毛細血管の消失、構築の乱れ、樹枝状毛細血管、出血)

SDパターンは健常者ではみられず、強皮症、皮膚筋炎、MCTDで多くみられた


A portable dermatoscope for easy, rapid examination of periungual nailfold capillary changes in patients with systemic sclerosis
Eiji Muroi, Toshihide Hara, Koichi Yanaba et al.
Rheumatol Int. 2011 Dec;31(12):1601-6. doi: 10.1007/s00296-010-1532-0.

ダーモスコピーで強皮症患者の爪囲血管を評価
DermLite® DL100 (×10)を使用し10指で拡張血管(矢印)、出血(矢頭)を観察

ダーモスコピーでの観察では肉眼での観察に比べて異常所見が多くみられた

ダーモスコピーで観察された所見の総数は、強皮症で健常者に比べて拡張血管は8.8倍、出血は3.9倍多かった

1指以上で2つ以上の拡張血管がみられた場合、強皮症の感度 83.1%、特異度 100%であった

拡張血管は平均で5.3(±2.9)指でみられ、左第4指で最も多かった(77.3%)

出血は平均で3.5(±2.1)指でみられ、左第4指で最も多かった(49.1%)


Assessment of nailfold capillaries with a handheld dermatoscope may discriminate the extent of organ involvement in patients with systemic sclerosis
Juan C Arana-Ruiz, Luis H Silveira, Diana Castillo-Martínez et al.
Clin Rheumatol. 2016 Feb;35(2):479-82. doi: 10.1007/s10067-015-3112-x.

強皮症患者のダーモスコピーで観察した爪郭毛細血管異常と疾患重症度(modified Medsger severity scale [MSS])を比較
爪郭毛細血管異常:0=normal, 1=early, 2=active, 3=late patterns
疾患重症度:modified Medsger severity scale (MSS)

Spearmanの順位相関係数は0.45 (95% CI 0.15-0.67; P=0.003)であった


ダーモスコピーによる膠原病の後爪郭毛細血管所見の検討
竹森千尋, 西井 径子, 小猿 恒志ら.
臨皮. 2020;74:483-9.

強皮症 73例、全身性エリテマトーデス 18例、Sjögren症候群 14例、原発性Raynaud病 10例、皮膚筋炎 7例、混合性結合組織病 5例についてダーモスコピーによる後爪郭毛細血管所見を検討
Normal pattern、Early pattern、Active pattern、Late patternに分けた

強皮症では Active、Late patternを示した症例の割合が他の疾患に比べ多く、毛細血管障害が高率にみられた

強皮症では爪囲紅斑や Raynaud現象などの皮膚症状がないにもかかわらず毛細血管異常を呈する例があった


毛細血管スコープの方が倍率も高く詳細な観察ができますが、ダーモスコープでも感度はやや低くなるものの特異度は高い傾向があります。

これは検者のスキル、経験にも影響されると思います。

肉眼的な皮膚所見がなくても爪郭毛細血管異常がみられることがあり、やはり可能であればダーもスコープで観察しておきたいですね。

  • ダーモスコピーの感度はやや低いが特異度は高い傾向
  • <肉眼的な皮膚所見がなくても爪郭毛細血管異常がみられる

まとめ

強皮症の爪郭毛細血管異常のダーモスコピー所見についてまとめました。

ダーモスコピーは慣れるまでは結構難しく、わたしも皮膚科の先生や膠原病科の先輩に教えてもらっています。

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