Infection

無菌性膿疱は本当に無菌か?

Answer

無菌性膿疱は尋常性膿疱などでみられる膿疱とは異なり、炎症細胞浸潤があっても細菌が検出されないことが特徴です。

しかし、自験例ですが、最終的に急性汎発性発疹性膿疱症やBehçet病と診断した症例で膿疱をグラム染色してみると、貪食されている菌体がしっかり見えることが時々あります。

今回は無菌性膿疱は本当に無菌なのか、文献的に調べてみました。

無菌性膿疱をきたす疾患は?

まずは、一般的に無菌性膿疱をきたすと言われる疾患をまとめました。


Pustular skin disorders: diagnosis and treatment
Yebabe M Mengesha, Michelle L Bennett.
Am J Clin Dermatol. 2002;3(6):389-400. doi: 10.2165/00128071-200203060-00003.

膿疱性皮膚疾患に関するレビュー

無菌性(sterile)と記載のある疾患を抜粋

膿疱性乾癬(汎発型)
乾癬の一病型
突発性(数時間以内)の汎発性無菌性膿疱が特徴

急性汎発性発疹性膿疱症 
薬剤過敏反応のひとつ
薬剤開始後1-2週間で発症
βラクタム系抗菌薬が最多

掌蹠膿疱症
手掌・足底の再発性膿疱

稽留性肢端皮膚炎
手指・足趾から近位に進展する稀な無菌性膿疱性発疹

好酸球性毛包炎
顔面・体幹・上肢など全身に生じる毛包一致性膿疱


Neutrophilic Dermatoses: a Clinical Update
Emma H Weiss, Christine J Ko, Thomas H Leung et al.
Curr Dermatol Rep. 2022;11(2):89-102. doi: 10.1007/s13671-022-00355-8.

好中球皮膚症は組織で無菌性好中球浸潤がみられる炎症性疾患の一群

主な疾患
Sweet病
壊疽性膿皮症
Behçet病
好中球性エクリン汗腺炎


膿疱は免疫異常や薬剤性など、感染以外の病態で生じると無菌性になります。

多くの疾患で発症部位や膿疱以外の病変に特徴があるため、鑑別自体はそれほど難しくないと思います。

  • 免疫異常や薬剤性など、感染以外の病態で生じる膿疱が無菌性とされる

無菌性膿疱は無菌か?

それでは、無菌性膿疱は本当に無菌なのでしょうか。

膿疱内の病原体についての報告があった2疾患を紹介します。

掌蹠膿疱症

The microbiome of the “sterile” pustules in palmoplantar pustulosis
Kana Masuda-Kuroki, Masamoto Murakami, Naohito Tokunaga et al.
Exp Dermatol. 2018 Dec;27(12):1372-1377. doi: 10.1111/exd.13791.

掌蹠膿疱症の膿疱化水疱検体でDNA解析

膿疱化水疱の30.2% (13/43)からStaphylococcusPropionibacteriumStreptococcusPyrinomonas検出されたが、汗疱や表面スワブからはほとんど検出されなかった


Molecular detection of fungal and bacterial DNA from pustules in patients with palmoplantar pustulosis: special focus on Malassezia species
Y Matsumoto, K Harada, T Maeda et al.
Clin Exp Dermatol. 2020 Jan;45(1):36-40. doi: 10.1111/ced.14026.

掌蹠膿疱症の膿疱検体でDNA解析

95.8% (68/71)で真菌のDNAが検出され、42.3% (30/71)でMalassezia spp.が検出された

細菌のDNAは検出されなかった


掌蹠膿疱症の一部で細菌・真菌が検出されたと報告されています。

2研究で検出されたのが細菌・真菌と大きな違いがありますが、結果の違いは検体やプライマーの違いのようです。

Behçet病

The pustular skin lesions in Behçet’s syndrome are not sterile
G Hatemi, H Bahar, S Uysal et al.
Ann Rheum Dis. 2004 Nov;63(11):1450-2. doi: 10.1136/ard.2003.017467.

Behçet病と尋常性痤瘡の膿疱検体の培養を比較

各検体で少なくとも1菌種が培養された

それぞれと比較して、Behçet病ではStaphylococcus aureus (58.6%)、Prevotella spp (24.3%)が多く、尋常性痤瘡ではCNS (45.9%)が多かった

Propionibacterium acnesは同程度であった (41.4% vs 45.9%)


Detection of microbial DNA in skin lesions from patients with Behçet’s disease
Michiko Tojo, Hirokatsu Yanagihori, Xueyi Zheng et al.
Adv Exp Med Biol. 2003;528:185-90. doi: 10.1007/0-306-48382-3_36.

Behçet病の粘膜・皮膚病変の検体でBes-1 DNA (S. sanguisの抗原をコード)を評価

5/18例でBes-1 DNAが検出された


Behçet病でも膿疱から細菌が検出された報告がありました。

いずれの疾患も、病態に細菌・真菌が関与されている可能性はありますが、検出されているのが皮膚常在菌であることから、形成された無菌性膿疱に後から菌が混入しているだけの可能性もあると思います。

  • 掌蹠膿疱症やBehçet病の膿疱で細菌・真菌が検出されたと報告されている

まとめ

無菌性膿疱の病原体について調べてみました。

無菌性膿疱が特徴の疾患であっても、膿疱から菌が検出されることがあるようです。

膿疱のグラム染色・培養で菌が検出されても、無菌性膿疱をきたす疾患は否定できないということだと思います。

やはり、膿疱以外の病変を元に診断を進めるのがよさそうです。

Answer

あわせて読みたい参考書籍

Sponsored Link

コメントを残す

*

CAPTCHA