医師に必須の道具の一つ、聴診器ですが、皆さんはどうやって選んでいますか?
今回は聴診器選びに役立つ(かもしれない)、2大メーカーであるLittmanとWelch Allynの性能に関するエビデンスを紹介します。
※利益相反はありません。念のため。
LittmanとWelch Allynはどちらがよい?
日本ではLittmanとWelch Allynが大きなシェアを占めており、多くの先生がどちらかの聴診器を使っていると思います。
中でもLittman Cardiology IV、Welch Allyn Eliteが同価格帯(25,000~30,000円)で、どちらを選ぶか悩むことがあると思います。
それぞれの製品情報を見ても、正直大きな違いはないように感じます。
そこで、参考になるデータを紹介します。
An in vitro acoustic analysis and comparison of popular stethoscopes
Daniel Weiss, Christine Erie, Joseph Butera 3rd et al.
Med Devices (Auckl). 2019 Jan 15;12:41-52. doi: 10.2147/MDER.S186076.
Littman Cardiology IV、Welch Allyn Eliteを含む聴診器の感度、ノイズ除去性能をin vitroで評価した研究
※その他の聴診器は日本で入手困難
各グラフで数値が大きいほど(下にあるほど)性能が高い
製品名の後ろのDは膜(Diaphragm)、Bはベル(Bell)の意
腸音 (97–1,034 Hz)
心音 (22–281 Hz)
心雑音 (205–775 Hz)
呼吸音 (689–2,584 Hz)
in vitroのデータである点や、disposableの聴診器の性能が良い項目がある点など、疑問に思うところはありますが、全体的にLittman Cardiology IVの方がやや性能は優れているという結果でした。
同時に比較したことはありませんが、どちらもよく聴こえる印象でした。
最終的には付け心地やデザインなども併せて決めるのが良いかと思います。
ちなみに・・・
わたしはケンツメディコのラパポート型聴診器を使っています。
ラパポート型聴診器は、以前はHewlett-Packard社→PHILIPS社が製造・販売していた聴診器で、一旦は製造終了となったものの、現在はケンツメディコが復刻版として販売しています。
アメリカの医療ドラマERで使われており、昔ながらのファンも多く、身体診察好きな先生方がよく使っている印象です。
わたしも上司に奨められて使っていますが、よく聴こえる聴診器で、上の2つにも劣らないと思います。
とてもオススメできる聴診器ですが、次の点に注意が必要です。
- イヤーピースが硬い
- チューブの劣化に伴いヘッドが外れやすくなる
耳に合わないと結構痛いので、できれば試着をお奨めします。
わたしの聴診器は5年目ですが、チューブが外れやすくなってはいるものの、まだ問題なく使えています。
また、数千円で交換キットも売られているので長く使えると思います。
まとめ
最後に、聴診器を選ぶ際に気を付けることですが、
- 試着は必須(特にイヤーピースの付け心地)
- できれば試聴を(周りの先生から借りてみましょう)
- 値段と性能はある程度比例する(戦力になるのは20,000円台くらいから)
身体診察の教科書には、よく“聴診はイヤーピースの間にあるもので聴け”(=頭を使え)と書いてありますが、そもそも聴こえなければ始まりません。
性能を優先すれば安くはない買い物になりますが、長く使えるものですし、どれを選んでも初期投資として損はしないと思います。
ぜひ自分に合った聴診器を見つけてください。