今回は初期研修医としてスタートを切ったばかりの先生や、これから初期研修が始まる学生さん向けの教科書を紹介します。
どれも自分が研修医の時に読んだ教科書やその改訂版、指導医として研修医に勧めている教科書ばかりです。
まずは教科書の選び方を説明します。
教科書の選び方
医学書ってたくさんあって、何から読んだらいいか迷いますよね。
初期研修医スタートに適した教科書選びのポイントは以下の3つです。
① 臨床と直結した内容が書かれているか
② 短い時間で必要な知識を勉強できるか
③ どの診療科でも役に立つ内容かどうか
① 臨床と直結した内容が書かれているか
学生の頃は体系的な勉強が中心のため、成書での勉強が勧められます。
もちろん知識をつけるのには大切ですが、なかなか臨床の場面をイメージしにくいですよね。
指導医によっては初日から“輸液オーダーしといて”、“この検査の所見は?”など無茶ぶりをしてきます。
まずはすぐに臨床に役立つ知識を勉強できる教科書がオススメです。
② 短い時間で必要な知識を勉強できるか
初期研修医は国試を終えて気が抜けたところで、なかなか座学へのモチベーションが上がらないかもしれません。
カンファレンスの準備やレポートなど雑務も多く、腰を据えて勉強する時間も少ないでしょう。
そんな中で、短期間で効率よく勉強できるものがオススメです。
“しっかり知識をつけたい”と始めから成書で勉強する先生もいますが、まずは簡易な教科書で大筋をつかんだ方が、近道だと思います。
③ どの診療科でも役に立つ内容かどうか
初期研修医はスーパーローテートで、初めに回る診療科がバラバラです。
特に“研修医前から勉強しておこう”という将来有望な学生さんは、どの科でも役に立つ内容から勉強するのが良いです。
それでは、おすすめの教科書を紹介していきます。
オススメ教科書5選
内科レジデントの鉄則
ご存じ聖路加国際病院の内科レジデントがつくった、研修医必携の一冊です。
Common diseaseや輸液など、病棟で初日から必要な事柄について、基本的な知識や具体的な対応法がまとめられています。
タイトルの通り内科寄りの内容にはなっていますが、外科の患者さんでも何かしらの内科疾患は持っていますから、相手が成人であれば必ず役に立ちます。
これ一冊あれば、とりあえず基本的なことは対処できるようになります。
研修医当直御法度
これも有名ないわゆる“赤本”です。
ほとんどの研修医の本棚に置いてあると思います。
トラブルシューティング的な使い方で、救急受診する患者さんのたいていの主訴に対応できます。
“通読には向かない”とおっしゃる先生方もいますが、できれば初めて救急外来をする前に目を通しておくことをお勧めします。
救急は一分一秒を争う場ですので、どこにどんなことが書いてあるか把握しておくと、必要な時に探しやすいです。
はじめは暗記しようとしなくても大丈夫です。繰り返しているうちに自然と覚えるので。
絶対わかる 抗菌薬はじめの一歩
感染症はどの診療科でも必ず出会います。
したがって抗菌薬も頻繁に使う薬の一つです。
一口に抗菌薬と言ってもたくさんの種類があり、使い分けも非常に奥が深いです。
感染症の患者さんを受け持ったら、指導医に“この患者さんに抗菌薬なに使う?”と絶対に聞かれます。
抗菌薬の種類や一般的な使い方がまとめてあり、タイトルの通り、抗菌薬の勉強の入り口としてはピッタリな本です。
版が少し古い(2010年発売)のが難点ではありますが、正直この10年で大きく変わったことはないと思います。
まずは、この教科書で抗菌薬のイメージをつかみましょう。
レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室
胸部レントゲンはほとんどの病院でルーチン検査の一つだと思います。
当院でも入院患者さんは全員撮影し、研修医には必ず読影してもらいます。
この教科書はシステマティックな読影の仕方から、異常影の成り立ちまで、本当にわかりやすく書いてあります。
レントゲンの勉強はこれ一冊あれば、あとは経験していくだけだと思います。
レントゲンの教科書と言えばフェルソンが有名ですが、この本の方が圧倒的にわかりやすく、初期研修医には強くお勧めします。レジデントのための
レジデントのためのこれだけ心電図
最後に心電図の教科書を紹介します。
心電図も、レントゲンと同じくルーチン検査のひとつです。
また、救急外来では緊急疾患を見つける重要な手掛かりとなります。
上の胸部画像の教科書と同じシリーズで、心電図の基本や、異常所見の成り立ちが非常にわかりやすく書いてあります。
実は、他の4冊と違ってこの教科書だけ自分が研修医の時には出版されていませんでした。
正直この教科書で最初から勉強できる研修医がうらやましい、と思うくらいお勧めできる教科書です。
まとめ
初期研修医のスタートにおすすめの教科書を紹介しました。
繰り返しになりますが、いきなり難しい教科書にトライするよりも、わかりやすい教科書で勉強した方が身に付きやすく、すぐに臨床に生かすことができます。
効率よく勉強して、是非研修生活の良いスタートを切ってください。