General Internal Medicine

血栓や血腫で発熱する頻度や機序は?

Answer

不明熱の鑑別の一つとしてよく血栓症が挙げられますよね。

精査した結果、他に原因がみられなかったり、抗凝固療法で解熱した場合に血栓症が原因と結論付けることがあります。

また、血腫の吸収熱という言葉もよく聞くと思います。

実際のところ、血栓や血腫で発熱がみられる頻度はどのくらいあるのでしょうか?

また、血栓や血腫で発熱する機序はどう説明されるのでしょうか?

血栓・血腫で発熱する頻度は?

不明熱のうち血栓症の頻度は?

Role of venous duplex imaging of the lower extremities in patients with fever of unknown origin
A F AbuRahma, S Saiedy, P A Robinson et al.
Surgery. 1997 Apr;121(4):366-71. doi: 10.1016/s0039-6060(97)90305-6.

不明熱に対し下肢エコーを施行された症例でDVTが原因と判断されたのは6%(5/89)

2例で浮腫があったが、3例で浮腫はなかった

血栓症で発熱がみられる頻度は?

Fever in acute pulmonary embolism
P D Stein, A Afzal, J W Henry et al.
Chest. 2000 Jan;117(1):39-42. doi: 10.1378/chest.117.1.39.

造影検査で肺塞栓症と診断された363例を評価

37.8℃以上を発熱と定義

14%(43/311)で肺塞栓以外に原因のない発熱がみられた

肺出血や肺梗塞の頻度は発熱のない患者と有意差がなかった(9%[4/44] vs 15%[39/267])


Fever and deep venous thrombosis. Findings from the RIETE registry
Raquel Barba, Pierpaolo Di Micco, Angeles Blanco-Molina et al.
J Thromb Thrombolysis. 2011 Oct;32(3):288-92. doi: 10.1007/s11239-011-0604-7.

14,480例のDVT患者で、4.9%(707/14,480)で発熱(≥38℃)がみられた
※発熱の他の原因に関する詳細な記載はなし

発熱は30日死亡率と関連がみられた(HR 2.00; 95% CI 1.44–2.77)


Soluble p-selectin, D-dimer, and high-sensitivity C-reactive protein after acute deep vein thrombosis of the lower limb
Thomas Gremmel, Cihan Ay, Daniela Seidinger et al.
J Vasc Surg. 2011 Dec;54(6 Suppl):48S-55S. doi: 10.1016/j.jvs.2011.05.097.

エコーでDVTと診断された44例でCRPを評価

DVT症例では健常コントロールと比較して診断時・1カ月後のCRPが有意に高値だった
診断時:1.16 mg/dL (0.03-10.6 mg/dL) vs 0.15 mg/dL (0.02-2.63 mg/dL); P<.001
1カ月後:0.25 mg/dL (0.03-4.06 mg/dL) vs 0.15 mg/dL (0.02-2.63 mg/dL); P=.004

血腫で発熱がみられる頻度は?

Absorption fever characteristics due to percutaneous renal biopsy-related hematoma
Tingyang Hu, Qingquan Liu, Qin Xu, Hui Liu et al.
Medicine (Baltimore). 2016 Sep;95(37):e4754. doi: 10.1097/MD.0000000000004754.

腎生検を施行された2639例で腎周囲血腫がみられたのは4.5%(118/2639)

腎周囲血腫で血腫吸収熱(>37.3℃)がみられたのは41%(48/118)
※感染は診察・検査で区別

大血腫(>3cm)の方が小血腫(≤3cm)よりも血腫吸収熱の頻度か高かった(OR 5.25 [2.24–12.29])


不明熱の定義やpopulationにもよりますが、不明熱の原因として血栓症の頻度はそれほど高くないようです。

ルーチンでDダイマー測定や下肢エコーを行う必要はないと思いますが、他の診断がつかないときには検討してもよいかと思います。

反対に血栓症で発熱がみられる頻度も5-14%程度で、こちらもそれほど高くありません。

DVT患者さんで発熱がみられた場合は感染症など他の熱源を精査するのがよいでしょう。

血腫からの発熱は40%程度でみられるため、処置後や外傷後の血腫で発熱がみられても、慌てず様子をみるのも一つだと思います。

  • 血栓症で発熱がみられるのは5-14%
  • 血腫で発熱がみられるのは40%

血栓症で発熱する機序は?

Inflammation in deep vein thrombosis: a therapeutic target?
Delphine Borgel, Elsa Bianchini, Dominique Lasne et al.
Hematology. 2019 Dec;24(1):742-750. doi: 10.1080/16078454.2019.1687144.

凝固と炎症は密接に関連しており、炎症が血栓の形成、器質化、再開通に関与する

凝固の活性化で産生されたトロンビン、Ⅹa、TF-FⅦaは、プロテアーゼ活性化受容体を介して炎症を促進する

動物実験モデルでは、血栓の形成後数時間以内に好中球が浸潤し、サイトカイン、ケモカインが産生され、炎症、血管内皮細胞の活性化、凝固を促進する

浸潤した白血球はウロキナーゼ、MMPなどを産生し、血栓の溶解や血管壁の修復にもはたらく


血栓症や血腫で発熱する機序を考察した文献はあまり見つけられませんでした。

活性化した凝固因子や血栓に浸潤する白血球により炎症が促進されるようです。

  • 活性化した凝固因子や血栓に浸潤する白血球より炎症が促進される

まとめ

血栓症や血腫で発熱がみられる頻度・機序についてまとめました。

血栓症・血腫ともに発熱がみられた場合は他の原因との鑑別が重要です。

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