Infection

尿路感染症で尿pHが高いときに何を考える?

Answer

2022/5/12更新

  • 成人症例での尿pHと細菌に関する論文を追加しました。
  • やはりpH 8を超える場合はProteus属が多いようです。

尿pHは腎臓からの酸排泄により変動します。

食事や全身状態にも左右されますが、だいたい4.6~8の範囲で変動し、健常者ではpH 6前後になると言われています。

pHにより物質の析出のしやすさが変わるため、尿路結石症ではpHで結石の成分を推測出来たり、治療のために尿pHを調整したりします。

尿路感染症でも尿pHに注目すると役に立つことがあります。

それは”尿pHが高いとき”です。

pHが高くなる機序や使い方を解説します。

尿路感染症で尿pHが高いときの考え方は?

尿pHが高くなる機序は?

Bacterial ureases in infectious diseases
R A Burne, Y Y Chen et al.
Microbes Infect. 2000 Apr;2(5):533-42. doi: 10.1016/s1286-4579(00)00312-9.

健常者の尿には0.5Mの尿素が含まれる

細菌のもつウレアーゼが尿素を加水分解し、アンモニアが生成され尿pHが上昇する

尿路感染症に関連するウレアーゼ産生菌で最もコモンなのはProteus mirabilis

その他、Pseudomonas spp.、Klebsiella spp.、Staphylococcus spp.、Corynebacterium spp.、Ureaplasma ureolyticumProteus penneriが挙げられる

Escherichia coliはプラスミド性にウレアーゼを持ちうる


Crystalline bacterial biofilm formation on urinary catheters by urease-producing urinary tract pathogens: a simple method of control
Robert J Broomfield, Sheridan D Morgan, Azhar Khan et al.
J Med Microbiol. 2009 Oct;58(Pt 10):1367-1375. doi: 10.1099/jmm.0.012419-0.

in vitroで人口尿を用い、ウレアーゼ産生株によるpH上昇に伴う結晶形成を評価

Proteus mirabilisProteus vulgarisProvidencia rettgeriの3菌種では40時間以内にpH 8.3を超えた

その他の菌腫では96時間の培養で6.20~7.39であった


尿路感染症(細菌尿)では特定の菌種のもつウレアーゼにより尿pHが上昇することがあります。

実臨床ではどうでしょうか?

尿pHと起因菌の関係は?

Association between urine pH and common uropathogens in children with urinary tract infections
Huan-Cheng Lai, Shih-Ni Chang, Hsiao-Chuan Lin et al.
Microbiol Immunol Infect. 2021 Apr;54(2):290-298. doi: 10.1016/j.jmii.2019.08.002.

小児の尿路感染症で尿pHと培養結果を検討

  • 全体的にE. coliの頻度が最も多かったが、pHが高いほどP. mirabilisの頻度が高かった

Alkaline Urine in the Emergency Department Predicts Nitrofurantoin Resistance
Johnathan M Sheele, Claudia R Libertin, Isaac Fink et al.
J Emerg Med. 2022 Mar;62(3):368-377. doi: 10.1016/j.jemermed.2021.

救急外来の成人症例で尿検査、尿培養を評価

Proteus属は全体の6.7% (906/13456)で検出された
Proteus属の59.1%がpH 5–7、40.9%がpH 8–916.2%がpH 9であった
pH 5–7の検体の4.4%、pH 8–9の24.4%、pH 9の40.0%で検出された


グラム染色でE. coliProteusも同様なGNRなので区別は困難です(少なくともわたしはできません・・・)。

Proteusの中でもP. vulgarisはペニシリン系、第1世代セファロスポリンに自然耐性であることが知られています。

施設ごとの感受性や患者さんの状態にもよりますが、尿pHが高いとき、特に8を超える場合はP. vulgarisを想定してセファマイシン(セフメタゾール)や第3・4世代セファロスポリンの使用をお奨めします。

まとめ

尿路感染症で尿pHが高い場合の機序や考え方をまとめました。

尿pHが高いときはウレアーゼ産生菌、特にProteusを想定して治療を検討しましょう。

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