- 食物由来のビタミンは主に小腸で吸収され、腸内細菌叢由来のビタミンは大腸で吸収される
- 各ビタミンの小腸における主な吸収部位
- ビタミン毎に消化管内での分解や吸収の機序が異なる
消化管疾患や消化管手術後にビタミン欠乏がみられることがしばしばあります。
胃切除後の内因子欠乏に伴うビタミンB12吸収不良は有名ですよね。
他にもビタミン毎に吸収されやすい部位や機序によって欠乏症のリスクが違うのではないかと思い、調べてみました。
水溶性ビタミン
主に吸収される消化管の部位は?
Intestinal absorption of water-soluble vitamins
R C Rose.
Proc Soc Exp Biol Med. 1996 Jul;212(3):191-8. doi: 10.3181/00379727-212-44007.
水溶性ビタミンの小腸での主な吸収部位 (ヒト以外の動物実験データも含む)
消化管での吸収機序は?
Gastrointestinal Handling of Water-Soluble Vitamins
Hamid M Said, Ebba Nexo.
Compr Physiol. 2018 Sep 14;8(4):1291-1311. doi: 10.1002/cphy.c170054.
水溶性ビタミンの消化管吸収に関するレビュー
食物において、通常ビタミンは蛋白と結合している
消化酵素により蛋白から遊離したビタミンは担体輸送により吸収される
腸管内で受動的に吸収されるのは1%程度
食物由来のビタミンは主に小腸で吸収され、腸内細菌叢由来のビタミンは大腸で吸収される
小腸での吸収機構
大腸での吸収機構
各ビタミンの吸収における特徴
チアミン (B1)
食物内ではリン酸化物として存在し、吸収前に加水分解され遊離チアミンとなる
主な吸収部位は小腸近位部で、pH依存性に吸収される
リボフラビン (B2)
食物内ではFMN (flavin mononucleotide)、FAD( flavin adenine dinucleotide)として存在し、蛋白に結合している
胃酸、加水分解酵素により蛋白から遊離し、更に加水分解され遊離リボフラビンとなる
Na依存性に吸収される
ナイアシン (B3)
酸性pH依存性に吸収される
パントテン酸 (B5)
食物内ではcoenzyme Aとして存在し、吸収前に遊離パントテン酸に変換される
Na依存性に吸収される
ピリドキシン (B6)
食物内ではリン酸化物・非リン酸化物として存在し、吸収前に加水分解され遊離する
吸収に関する詳細は不明
ビオチン (B7)
食物内では遊離体・蛋白結合体として存在し、後者は腸管内で加水分解され、ビオシチンとなり、更にbiotinidaseにより遊離ビオチンに加水分解される
Na依存性に吸収される
葉酸 (B9)
食物内ではモノグルタミン酸型(遊離体)とポリグルタミン酸型で存在する
ポリグルタミン酸型は小腸内で葉酸加水分解酵素によりモノグルタミン酸型に加水分解される
pH依存性に吸収される
コバラミン (B12)
食物内では補酵素型かHydroxo/aquo-B12 (HO-B12)として存在しほとんどが蛋白と結合している
唾液内のhaptocorrinはコバラミンと結合し、胃酸内でのダメージから保護する
haptocorrinは小腸でトリプシン、キモトリプシンに分解される
胃壁細胞で産生された内因子がコバラミンと結合し、遠位回腸でcubilin、amnionlessより取り込まれる
アスコルビン酸 (C)
食物内では還元型 (アスコルビン酸)、酸化型 (デヒドロ-L-アスコルビン酸[DHAA])で存在する
DHAAは小腸でNa依存性に吸収されるが、糖と競合する
腸内細菌叢ではほとんど産生されない
水溶性ビタミンは主に小腸で吸収されるため、小腸疾患・手術後では吸収が低下しそうです。
食物内のビタミンは吸収前に加水分解などの修飾を受けるため、胃〜十二指腸の疾患・手術後でも吸収に影響が出るように思います。
- 食物由来のビタミンは主に小腸で吸収され、腸内細菌叢由来のビタミンは大腸で吸収される
- ビタミンにより吸収部位や機序が異なる
脂溶性ビタミン
主に吸収される消化管の部位は?
Fat-soluble vitamin intestinal absorption: absorption sites in the intestine and interactions for absorption
Aurélie Goncalves, Stéphanie Roi, Marion Nowicki et al.
Food Chem. 2015 Apr 1;172:155-60. doi: 10.1016/j.foodchem.2014.09.021.
マウスを用いた脂溶性ビタミンの吸収部位に関する研究
ビタミンA
主に小腸近位部で吸収される
ビタミンD
主に小腸中部で吸収される
ビタミンE
主に小腸遠位部で吸収される
一部盲腸でも吸収される
ビタミンK
主に小腸遠位部で吸収される
一部盲腸でも吸収される
脂溶性ビタミンも水溶性ビタミンと同様に、主に小腸で吸収されますが、各ビタミンによって吸収されやすい部位に違いがあります。
- ビタミンにより吸収部位が異なる
まとめ
ビタミンの吸収されやすい部位や機序についてまとめました。
消化管疾患の部位や手術部位によってビタミン欠乏のリスクが変わるのかについても、いずれ調べてみたいと思います。
- 食物由来のビタミンは主に小腸で吸収され、腸内細菌叢由来のビタミンは大腸で吸収される
- 各ビタミンの小腸における主な吸収部位
- ビタミン毎に消化管内での分解や吸収の機序が異なる