Infection

グラム染色って役に立つの?【意外と多いエビデンス紹介】

Answer

皆さんの病院ではグラム染色をどのようにしているでしょうか?

自分で染色から検鏡までできる施設から、検査室にすべてお任せのところまで様々だと思います。

わたしの場合は、初期研修をした病院でグラム染色が重要視されていたため早くから触れることができ、今でも感染症を疑えばグラム染色を活用しています。

日々グラム染色が役立つことを実感していますし、グラム染色の教科書も多く出版されており、内科医には必須のスキルかな、と思います。

今回はグラム染色の有用性について、職人的な検鏡技術については素晴らしい教科書がたくさんあるので、グラム染色に関する研究を紹介します。

菌の推定

グラム染色の目的の一つは、当然ですが、菌の推定です。

培養には数日かかりますが、グラム染色は早ければ数分で検査できるので、迅速な菌の推定、治療選択に役立ちます。

培養との一致

尿グラム染色

Utility of point-of-care Gram stain by physicians for urinary tract infection in children ≤36 months
Toshifumi Yodoshi, Masato Matsushima, Tomohiro Taniguchi et al.
Medicine (Baltimore). 2019 Apr;98(14):e15101. doi: 10.1097/MD.0000000000015101.

36か月以下の小児で尿グラム染色と尿培養の一致率を検討

κ係数 0.784 (95% CI 0.736–0.831)であった(※0.61〜0.80でかなりの一致と判断される)

喀痰グラム染色

市中肺炎診療における喀痰グラム染色の有用性
佐藤 匡, 青島 正大, 大曲 貴夫 ら.
日呼吸会誌. 2002. 40(7): 558-563.

市中肺炎144例に対する喀痰グラム染色の有用性を検討

グラム染色の感度 75.5%、特異度 68.2%、正診率 72.2%であった


Validation of sputum Gram stain for treatment of community-acquired pneumonia and healthcare-associated pneumonia: a prospective observational study
Hajime Fukuyama, Shin Yamashiro, Kiyoshi Kinjo et al.
BMC Infect Dis. 2014 Oct 18;14:534. doi: 10.1186/1471-2334-14-534.

肺炎患者670名を対象

喀痰グラム染色と、喀痰培養・血液培養・BAL・尿中抗原から推定した菌を比較

菌の推定に関して、特異度が高かった

グラム染色を用いるとメロペネムの使用が減った(3.0% vs 55.9%)

髄液グラム染色

Point-of-care cerebrospinal fluid Gram stain for the management of acute meningitis in adults: a retrospective observational study
Tomohiro Taniguchi, Sanefumi Tsuha, Soichi Shiiki et al.
Ann Clin Microbiol Antimicrob. 2020 Dec 7;19(1):59. doi: 10.1186/s12941-020-00404-9.

髄膜炎患者(細菌性 34例・無菌性 97例)に対する救急外来での髄液グラム染色を検討

髄液グラム染色は細菌性・無菌性の区別に有効だった
感度 91.2%、特異度 98.9%

菌の推定に関して、特異度が高かった

Staphylococcus

血液培養液中のブドウ球菌属の塗抹グラム染色による形態学的鑑別
近藤 成美, 山田 俊彦, 三澤 成毅 ら.
感染症学雑誌. 2008; 82(6:) 656-657. doi: 10.11150/kansenshogakuzasshi1970.82.656.

BACTECシステムで検出されたブドウ球菌属を形態的に鑑別

S. aureus
クラスター:重積のあるクラスターがみられる
菌体サイズ:大型(> 1μm)。中型の菌体は好気>嫌気

CNS
クラスター:重積はあまりみられず、平坦・小さなクラスター
菌体サイズ:中~小型(≤ 1μm)


Validation of blood culture gram staining for the detection of Staphylococcus aureus by the ‘oozing sign’ surrounding clustered gram-positive cocci: a prospective observational study
Yoshiro Hadano, Miwako Isoda, Kazushige Ishibashi et al.
BMC Infect Dis. 2018 Sep 29;18(1):490. doi: 10.1186/s12879-018-3412-2.

S. aureus・CNSの区別にOozing signが有用
感度 78.7%、特異度 95.0%

Oozing sign:菌塊周囲のピンク色の染み出し像(※コアグラーゼで析出したフィブリン)

S. aureus
CNS

治療選択

Impact of Gram stain results on initial treatment selection in patients with ventilator-associated pneumonia: a retrospective analysis of two treatment algorithm
Jumpei Yoshimura, Takahiro Kinoshita, Kazuma Yamakawa et al.
Crit Care. 2017 Jun 19;21(1):156. doi: 10.1186/s13054-017-1747-5.

人工呼吸器関連肺炎の治療選択に対するグラム染色の有効性を検討した後ろ向き研究

グラム染色により、治療失敗が増えることなく広域抗菌薬の使用を減らせた


グラム染色は高い精度で起因菌を推定することができます。

習熟すればなんとブドウ球菌の鑑別もできるようになります。

起因菌の推定をすることで広域抗菌薬の節約にも役立ちます。

  • グラム染色は高い精度で起因菌を推定でき、抗菌薬選択に役立つ
  • 形態やOozing signでブドウ球菌の鑑別ができる

治療の効果判定

グラム染色のもう一つのメリットは、検鏡像によってオンタイムで治療の効果判定ができることです。

これは時間のかかる培養や、炎症所見などを間接的に見る血液検査よりも優れたところだと思います。


Usefulness of gram-stained sputum obtained just after administration of antimicrobial agents as the earliest therapeutic indicator for evaluating the effectiveness of empiric therapy in community-acquired pneumonia caused by pneumococcus or Moraxella catarrhalis
Ryuichi Fujisaki, Toshimori Yamaoka, Michiko Yamamura et al.
J Infect Chemother. 2013 Jun;19(3):517-23. doi: 10.1007/s10156-012-0475-7.

肺炎球菌肺炎・Moraxella肺炎について、抗菌薬投与後に喀痰グラム染色をフォローした報告

抗菌薬投与直後~1時間程度で治療の効果判定が可能

肺炎球菌:治療前→ABPC投与終了15分後→1時間後
Moraxella catarrhalis:治療前→CTX投与終了1時間後→2時間後

Morphological and ultrastructural changes in bacterial cells as an indicator of antibacterial mechanism of action
T P Tim Cushnie, Noëlle H O’Driscoll, Andrew J Lamb.
Cell Mol Life Sci. 2016 Dec;73(23):4471-4492. doi: 10.1007/s00018-016-2302-2.

抗菌薬の作用機序による菌体変化をまとめた論文(※グラム染色で視認できるものを抜粋)

変化

概要

抗菌薬

スフェロプラスト・プロトプラスト

ペプチドグリカンの喪失で膨化・球体化

βラクタム(ペプチドグリカン合成阻害)

卵形細胞

桿状菌が外側壁の合成阻害で短縮

イミペネム(外側壁のペプチドグリカン合成阻害 [PBP2])

フィラメント化

隔壁の合成阻害で異常に伸長

セフェム(隔壁のペプチドグリカン合成阻害 [PBP3])
キノロン(DNA合成阻害)
トリメトプリム(葉酸代謝阻害)

偽多細胞化

隔壁形成はあるが分裂できず大型化・伸長

セフェム(隔壁のペプチドグリカン合成阻害 [PBP3])
クロラムフェニコール(蛋白合成阻害)
トリメトプリム(葉酸代謝阻害)

その他隔壁障害

形態の崩壊

ペニシリン(ペプチドグリカン合成阻害)
ダプトマイシン(細胞膜障害)

バルジ形成

壁の一部が突出

βラクタム(ペプチドグリカン合成阻害)
トブラマイシン(蛋白合成阻害)
スルファメトキサゾール(葉酸代謝阻害)
ダプトマイシン(細胞膜障害)


菌量の減少や消失だけでなく、菌体の変化でも治療効果の判定をすることができます。

早ければ数時間以内に変化が出ることもあり、empiricalな治療が効いているかどうか即座に判断することができます。

自験例ですが、グラム陰性桿菌ではこのような変化がみられます。

治療前
抗菌薬投与翌日
フィラメント化・バルジ形成
治療前
抗菌薬投与翌日
フィラメント化

  • 菌量や形態の変化で治療効果を判定できる

まとめ

グラム染色は職人芸のイメージもありますが、意外と論文化されており、エビデンスも構築されています。

グラム染色に関する論文は日本のものが多く、特に沖縄中部病院からの報告がとても多いです。さすがですね。

設備のハードルがあって自分で染色することができない先生もいらっしゃると思います。

それでも検査室で自分で検鏡すると色々な情報に気付くことができます。

内科医として是非身に付けたい技術です!

こちらでグラム染色を勉強するのにおすすめの教科書・ホームページを紹介しているので、参考にしてください。

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